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中之島の夜。

 

2024/3/13

 
     
 

 

 

先月、中学時代の同級生と二人して、外国人アーティストの5年ぶりの来日公演に行ってきた。

 

5年前の来日公演のときも彼と一緒だったけど、このたびアーティストは79歳に、我々二人は60歳になった。

 

ファン層として60歳はまだ若い方かもしれない。

周りを見渡すと、2,700人を収容できるホールは、人生経験豊富なジジとババでぎっしりと埋め尽くされていた。

 

 

 

アーティストがステージ中央に立ち、自慢のギターを肩にして“オ・オ・サ・カ~!”の叫び声を合図に、ジジとババが一斉に「いえーい!」

 

コロナにも負けずにここまでたどり着いたジジとババたちは、実にパワフルだ。

 

はるか彼方に過ぎ去った青春時代を思い出しながら、曲に合わせて頭上で大きく手拍子。

 

ライブ後半になると、興奮したジジとババがスタンディングオベーションからのスタンディングライブ状態となり、こぶしを前に突き出し超ノリノリに。

 

 

血圧は大丈夫かと心配したが、日頃の人間ドックよろしきを得て、または、せっせとセサミンを摂取してきたおかげなのか、私の見る限りでは一人の救急搬送者もなく、

79歳のアーティストにしても、“もう就寝時間なんだ、いい加減にしてくれよ”とアピールしながらも、5曲のアンコールに応え、午後9時すぎに無事にライブは終了した。

 

40年以上に渡り聴いてきたこのアーティストの来日はこれで最後かと思うと少し寂しくもあるが、とても79歳とは思えない声量のある伸びやかな歌声と円熟味のあるギターの音色に魅了させられた。

 

 

 

 

「じゃあ、また」

 

彼とは、いつものように次に会う約束をすることもなく、握手をして別れ、彼のうしろ姿を見送った。

 

― 白くなったなあ、それに薄くもなって・・・

 

さみしくなった彼の頭髪とはるか彼方に過ぎ去った青春時代。

 

― だいぶん遠いところまできたな。

 

 

 

 

 

ジジとババがどっと帰路に着き、気が付けば人もまばらになった中之島。

 

夜景がきれいだった。

 

   

 

  

 

 

 

 
  林 正寛