一寸先は光(№777)
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2025/11/19 |
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「嘘をつくような人間は、死ぬと地獄に落ちて閻魔大王に舌を抜かれますよ」
子どものころ、嘘がバレると母からこう叱られた。
他にもある。
「この世で人を騙した人間は、地獄で針の山を歩かされる」 「人を傷つけた人間は、地獄で血の海に沈められる」
母の「地獄語録」には散々脅かされたが、地獄については、この世にいる誰もがその存在を100%否定することはできないわけだから、母の脅しは、大人になってからも教訓となった。
それと、幼いころ母から聞かされたことをもう一つ。
「自殺をして親より先に死んだ人間は、暗くて狭いところに閉じ込められるから、死んでも楽になれませんよ」
「だから、決して自殺をしてはいけない、親より先に死んではいけない、どんなに苦しくても歯を食いしばって生きなさい」と。
こんな私でも、これまで、もしかすると死んだ方が楽になるのではないかと、そんな思いが頭をよぎってしまうこともあった。
しかし、そんなときに決まって頭に浮かぶのが、死んだ後に暗くて狭いところに閉じ込められている自分の姿であり、これはかなわん、死んでも楽にならんナと思い直したものだ(地獄に回される可能性も高いし)
2024年の小中高生の自殺者が529人で過去最多となったと先月の新聞記事。
今の世の中は複雑で怪奇だ。
SNSを使ったいじめや誹謗中傷も陰湿で、私が育った時代にはなかった。
だから、私の母の言葉や私の経験なんて何の足しにもならないだろうが、死んでも楽にはならないようだから、とりあえず「今日」を生きる。生き残る。 「今日」を乗り越えることができれば、「明日」は必ず手に入る。
これでいいのかなんて答え合わせもしない。生きる意味も考えない。
無理にがんばることはない。
ただ、生きることは諦めない。
先月、大阪天満宮に貼りだされていた「十月のことば」に立ち止まった。
「一寸先は闇でも、その一寸先には光がある。 やなせたかし」
いつか笑える日は来る。
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| 林 正寛 | ||








