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生まれ変われるとしたら(№771)

 

2025/5/26

 
     
 

 

 

前職、トッカイ(特別回収部)大阪の幹部OB会を企画し、先日、8名で集まった。

 

これだけの人数で集まるのは十数年ぶりのことであるが、77歳を筆頭に、70代が6名、60代が2名。当時、最年少で班長の職に就いた私は、61歳になった今でも、この人たちの前ではペーペーだ。

 

― しかし、なんだな。みんな、老けたね。

 

このヒトたちは全員、あのころ、反社やらマル暴やらの怖いヒトたちを呼び出しては、貸した金を払えと交渉し、やれ差押だの強制執行だのと、毎日毎日、鬼のような形相で不良債権の回収をしていたのだが、この穏やかな表情と和やかな雰囲気の中にいると妙な気持ちになる。

 

― こ、これは、町内会の集まりか・・・

 

職場も立場も年齢も異なっていたヒトたちが、バブルの崩壊で運命が変わり、帰りの切符を持たないまま「トッカイ」で交差し、怒涛の時間を過ごした。

 

ただ、私が退職してからでも、すでに20年の年月が流れた。

 

「みなさん、ご存じのとおり、当時私たちを支えていただいたNさんが2年前に亡くなられました。会いたいと思っていたヒトにもう会えません」

 

一同、うんうんと神妙な面持ちで私の言葉に耳を傾けてくれている。

 

「みなさんのお年を考えると、今後、また一人二人と会えなくなるヒトが出てくると思い、急ぎ、この会を企画した次第です」

 

どっと笑いが起きたが、正直なところ、この思いに他ならない。

 

あのころ一緒に戦ったオジサンたちに会っておきたかった。

 

そして、世間では、失われた20年とか言われているが、たしかにあのとき、私がそこにいたことを確認したかった。

 

 

 

 

「生まれ変われるとしたら何になりたい?」

 

「私は、やっぱりセミがいいわ」

 

妻は一貫している。

 

土の中で何年間かゆっくり過ごした後、地上に出て一週間で命を全うする。うまい理由は見当たらないというが、それもいいかもしれない。

 

「あなたは何に生まれ変わりたいンですか」

 

一瞬、トッカイのオジサンたちが頭に浮かんだので、慌てて頭を振った。

 

「う~ん、大谷さンちのデコピンかな」

 

― 一生、安泰だろう。それに人間はもう懲り懲りだな。

 

 

 

あの夜、お店の人に頼んで撮ってもらい、スマホに保存しておいた写真を見返した。

 

みんなで写真だなんて初めてだったので、ちょっとだけ嬉しかった。

 

それにしても、トッカイのオジサンたちの微笑む顔は、あのころとのギャップが大きすぎて、かなりキモかった。

 

   

  

 

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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