槍が降る確率。

槍が降る確率。

  2018/7/19  
     
 

 

今年の梅雨のある朝、出がけに家人に言われた。

 

「あなた、今日は午後から降水確率40%ですから傘を持っていってください」

 

― つまり、60%は降らないってことだから要らないんじゃないの。

 

と言おうとしたが、こういう場合、下手に講釈をたれると雨どころか槍が降ってくるかもしれないので、素直に従うことにした。

 

 

それにしても、いい年齢なのにいつもビニール傘というのもいかがなものかと思い、家に1本だけある黒い生地のやや高級な傘を手にした。

 

すかさず家人が、「いやだ、それ持っていくの?なくさないでくださいよ」

 

なくすことを恐れて使わないというのなら、一体なんのために買ったのかわからなくなる。

 

「たまに手にすると緊張感もあるし、ダイジョウブ!絶対なくさないから」

 

 

 

雨は予報どおり振り出し、午後からの打ち合わせには傘を差すことになった。

 

ただ、この日は風もあり、傘がひっくり返らないようやや前傾に差すと、生地が黒いので前が見えない。

 

以外にもビニール傘の使い勝手の良さに気付かされたりもした。

 

 

 

降水確率とは別の意味で分かりにくいのが、地震の発生確率である。

 

30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率が先日、政府の地震調査委員会から発表されたが、大阪市は56%。

 

どう判断すればいいのかわからない微妙な数字である。

 

千葉市にいたっては85%である。防災や減災に対する日ごろの備えは大切であるが、ただ恐怖心をあおるだけにならないか心配になる。

 

 

 

その日の夜、飲みに行くことになり、何軒かハシゴした後、夜更けのタクシーの中で酔いが覚めた。

 

 

傘が無い。

 

 

1軒目の店に行くときに傘を差していたことまでは覚えているが、その後の記憶がない。

 

雨はすでにあがっている。

 

 

 

 

こういう場合、するまでもないが、一応、頭の中で予報してみた。

 

 

 

― 明日の朝、槍が降る確率は……100%

 

 

 

防災も減災もできない、ただ恐怖心をあおるだけの数値だけど。

 

 

 

 

 

 

 

  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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