天を仰いだ夜更けの御堂筋。
2019/3/5 | ||
私は高校時代は岡山で過ごしたが、あのころ、こんな私にも友と呼べる仲間がいた。
ジェフベックやラリーカールトンを聴きながら、バンドで食べていく夢を語り合い、いつかハーレーでツーリングしたいと、原付バイクをふかしながら夜の街を走った。
松田優作の映画を見ながら、どうすればカッコよく煙草が吸えるか研究し合い、「オンナの心はわからんのぉ」と、苦い酒をあびながらなぐさめ合った。
バンドは解散し、メンバー全員、別々の道を歩み、ハーレーに乗ることはなかった。
松田優作は亡くなり、私は煙草をやめた。 オンナ心はいまだにわからないが、酒をあびるのはやめた。
先月、30年ぶりくらいだろうか。あのころの友ふたりに大阪で会い、酒を飲んだ。 いくつの坂を登ってきたことなど言わなくても、顔に深く刻まれたしわ、白く染まった髪、テカテカと光を放つおでこを見ればわかる。
久しぶりに会った同い年の友の老化を目の当たりにし、「ああ、人生は間違いなく終わりに向かっているんだ」とあらためて思い知らされた。
どうしたんだHey Hey Baby バッテリーはビンビンだぜ いつものようにキメてブッ飛ばそうぜ
あのころ、岡山の夜空に向かってみんなで叫ぶように歌ったRCサクセション。
― 青臭かったけど、みんなきまっていて、カッコよかったナ~。
ふたりと別れたあと、フラフラと歩きながら口ずさんでみたけれど、バッテリーはとっくに不足していて、ビンビンにならない。
あんなに歌ったのに、途中、歌詞さえも忘れて歌が続かない。
まったく、何をやってもきまらなくなった55歳。
― こんな夜に発車できないなんて…。
思わず天を仰いだ夜更けの御堂筋。
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林 正寛 | ||