君がいるだけでこの世界は素晴らしい。
2019/11/15 | ||
「人間がなぜ泣くのかわかった。オレには涙を流せないが」
ターミネーター2のラストシーン。 ターミネーターは、こう言い残して姿を消した。
ターミネーターでなくても、大人の男ならフツーそうだろう。 感動しても、哀しくても、心で泣いて涙は見せないものだ。出ないように訓練されているといってもいい。
私は今年、父と母を立て続けに亡くしたが、涙は出なかった。 父と母に対し、思うところはある(後悔ばかりだが)。あるがそれは、胸の奥だ。
ところが先日、用事のついでにフラッと立ち寄り、生まれて初めて見た金閣寺に感動し、こともあろうか、うるッときた。
小春日和の真っ青に染まった空に映える金閣寺の美しさは想像を超えたが、ただ、そこまで感動するかと、そんな自分にやや戸惑った。
少し前は、ドラマを見ていて感動し、やばかったこともある。
カラダは、地球の重力に対する抵抗力をとっくに失い、お腹はたるむし、地下鉄の階段を上がるのもつらい。 飲みに出ても、あちこち歩き回るのが億劫で、このごろはクラブ活動もサボり気味である。
年をとれば涙腺が緩むというが、これも重力の影響かもしれない。涙腺が重力に負けてたるみ、緩くなっているのだろう。
天皇陛下の即位を祝う国民祭典とパレードでは、皇后さまが涙ぐまれる場面があった。
そりゃあ、涙も出るだろう。 皇室に嫁がれて以降のことは、本人にしかわからない、人には言えないたくさんの苦労を抱え込んできたに違いない。 ただ、お年もとられた。
皇后さまは、私と同じ昭和38年生まれで、誕生日も3日しか違わない。 その人生と立場は、月とすっぽん以上に違うが、年は平等にとる。
人はみな、もう一つの何かを抱えたまま生き、そして、もう一つの何かを胸に仕舞い込んだまま死んでいく。
このごろは、孫の姿を見ているだけでジ~ンとくることもある。
君がいるだけでこの世界は素晴らしい。
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林 正寛 | ||