大山の涙。

大山の涙。

  2023/9/20  
     
 

 

 

ようやく「アレ」の呪縛から解放され、やっとこさ優勝できた阪神タイガース。

 

岡田監督が胴上げされ、歓喜に沸くナインの中で、4番の大山(おおやま)が泣いていた。

 

 

 

「どうして大山なんかを1位で指名したんだ」

「大山を指名した阪神のドラフトは50点」

 

彼は、この批判の中で7年前にプロ野球人生をスタートさせた。

 

「自分のせいで申し訳ない」

 

大山は、ドラフト同期入団の選手に謝ったという。

 

 

「大山で負けた」

 

入団以来、口さがないファンから何度叩かれただろうか。

最下位も経験した。

 

しかし、それでも彼は、黙々とバットを振り続けた。

凡退しても常に全力疾走を怠らなかった。

不慣れなポジションでも、納得のいかない打順でも不満を一切口にしなかった。

 

大山はさぞ悔しかっただろう。

 

 

 

優勝の後、選手自身や、選手を支えた家族の手記やインタビュー記事がマスコミによって様々紹介されているが、そんな「裏話」も勝ったからこそだ。

 

勝たなければ、埋もれたままで世には出ないし、苦労も勝たなければ報われはしない。

 

「僕は選手の自主性に任せ、勝つことよりはまずプロセスを大切にした」

 

矢野前監督が今年、トークショーかなにかでそんな話をしていたが、負け惜しみだろう。

 

部活の顧問でもあるまいし、プロである以上、結果しかない。

 

勝った、結果を出した、だから大山は泣いたんだ。

プロセス重視なら大山は泣かない。

 

 

 

レフトスタンドへ放物線を描く大山のアーチは美しい。

ただ、大山にガッツポーズは無い。

彼は、打たれたピッチャーの心情を思い、足早に、黙々とダイヤモンドを一周する。

派手さはまったくないが、かっこいい。

 

 

今年は大山がいたから阪神は優勝できた。

そして、念願の日本一へ・・・。

 

カンバレ、大山。

 

(まちがってもクライマックスシリーズで負けたりしないでね)

 

  

         

 

 

 

  林 正寛