前人未到の八冠を達成した藤井聡太氏。

21歳にしてプロ棋士174人の頂点に立った。

―　さすがだ。

それにしても21歳であの落ち着き払った受け答えには、思わず息をのむ。

毎日のようにパチンコ、ときに麻雀。手元ができれば東梅田商店街や十三商店街を飲み歩く。

お先真っ暗だったそんな私の21歳と比べても仕方がないが、どうすればあのような若者が育つのだろうか。

―　いやいや若くして頂点に昇りつめてしまうとあとが困るぞ。

そんな心配を吹き飛ばす彼のコメントが素晴らしい。

「まだまだ頂上は見えない」

彼がめざす頂はいったいどれほど高いのだろうか。

―　う～ん。

腕組みをして唸り声を上げながら、我が家の低い天井を見上げるとカメムシを発見した。

天井にへばりついたままジッとしている。

今年は、大量発生中のカメムシに悩まされているが、このところ、部屋の中にまで侵入してくるようになった。

カメムシはうっかり触ると強烈な臭いを発し、それが手などに付着すると洗っても取れない。

Ｇほど気持ち悪くはないが、なかなか厄介だ。

そのときだった。

「あなた、任せてください」

ゴム手袋で両手を武装した家人が現れ、サッと椅子に登ったかと思うとあっという間にカメムシの身柄を確保し、退治してしまった。

意表を突かれたカメムシは、一切抵抗できないまま投了した。

―　家人よ、さすがだ。

若き天才藤井聡太氏が全タイトルを独占するという歴史的快挙を達成したその日。

我が家ではカメムシ相手に小さな勝利を収めた。

平和だ・・・。