ハレー彗星じゃあるまいし。

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ハレー彗星じゃあるまいし。

  2023/11/17  
     
 

 

 

「マサヒロ、わしが死ぬまでに阪神は優勝するだろうか」

 

あのころ父はしょっちゅう、こうつぶやいていた。

 

「せやな、父さんが死ぬまでにはせめて1回は優勝するやろ」

 

なんの根拠もなく感覚で答えていたが、結局、父は阪神の優勝を見届けることなく、4年前に亡くなってしまった。

 

 

 

「巨人・大鵬・卵焼き」

 

これは、1960年代に子どもを中心とした大衆に人気のあったものの象徴として流行した言葉で語呂がいい。

 

今では死語だ。

 

当時、テレビ中継があるのは巨人戦だけで、川上哲治監督率いる巨人は、王貞治と長嶋茂雄の全盛期。とにかく強かった。

 

当然、大衆は「巨人、巨人、巨人」となる。

 

そんな中、なぜ私の父は阪神ファンになったのだろうか。

 

阪神戦のラジオ中継にしても島根までは届きにくい。

 

それでも父は、小型ラジオに耳をくっつけるようにして、電波を拾い拾い、家の中をウロウロしながら必死に聴いていた。

 

必然、私もそうなる。

 

小学生のころには、父と二人してラジオに耳をくっつけて家の中をウロウロしていたものだ。

 

 

 

そんな往年のファンは、甲子園球場で大騒ぎなどしない。

 

勝って喜びを噛みしめ、負けてしんみりとため息をつく。

 

そして、シーズン終了後、今年もダメだったかと、涙がこぼれ落ちないよう天を仰ぐ。

 

毎年毎年、何年も何年もだ・・・。

 

 

そんな阪神が生え抜きの岡田彰布監督の下、優勝したのだから、そりゃあ嬉しい。

 

日本一にもなった。格別だ。

 

ただ、嬉しいが、優勝までの18年は長すぎるし、38年もかかった日本一は、それこそ人生で一度きり、二度見られたらラッキーだ。

 

前回の日本一は、私が21歳の時だった。

 

ハレー彗星じゃあるまいし、もう少し周期が短くならないものか。

 

 

 

 

「なあ、オレが死ぬまでに阪神はもう一度日本一になるやろか」

 

珍しく隣で一緒にテレビ中継を見ていた息子につぶやいた。

 

「ムリやろな」

 

 

 

あゝ、涙がこぼれ落ちないよう天を仰いだ阪神日本一の夜。

 

 

  

         

 

 

 

  林 正寛