ややこしい人(№769)
2025/4/23 | ||
父が亡くなって6年経った。
そんな話を仕事中に娘としていると、「おばあちゃんはその後3ヶ月だったよね」
そう、母は、父が亡くなった3ヶ月後に、後を追うように大急ぎで旅立った。
“誰が見ても仲の良いオシドリ夫婦”からは、およそ遠いところにいた二人だけど、目に見えない絆のようなものはあったのだろうか。
当時、母の認知機能はかなり低下していた。そんな母をこのまま置いておくのを不憫に思い、父が連れて行ったのか。
そういえばと、娘が、内田也哉子サンが雑誌のインタビューの中で、こんなことを話していたと教えてくれた。
『母(樹木希林)の身体が弱ったころに、よく愚痴っていたんです。「お父さん(内田裕也)を残されてもどうすればいいかわからないよ」と。すると母は、「大丈夫、私が必ず連れて行くから」と言ってくれていたんですが、実際に半年で連れて行ってくれて、寂しいけど、ありがとうという気持ちもありますね』
「私も、もしもお母さんがお父さんを残して先に亡くなるようなことがあると困るから、その時は、早くお父さんを連れて行ってと、今からお母さんにお願いしておこっと」
「そ、それは、あれか、お父さんだけが残るとややこしからか」
「うん、そうだよ」
― そ、そんな真顔で、しかもパソコンから一切、目をそらさずにノールックで返事されても・・・
その夜、この話を妻にしたところ、
「あなた一人が残ると子どもたちがかわいそうです。私がすぐに迎えに行きますので、そのときは抵抗せずに逝きましょうね」
テレビでは、阪神タイガースの藤川監督が相手ピッチャーの危険球に激怒しているシーンが繰り返し流されていた。
ぶつけてしまったピッチャーは即座に頭を下げ、当てられたバッターもいいよ、いいよと穏やかに対応しているのに、藤川監督だけが一人激昂し、周りから止められてもなお、抵抗して相手ベンチに吠えていた。
「いやぁ、これはみっともないな。コーチは早く監督をベンチに連れ戻さないと」
「あなた、わかったでしょ」
― 私は、一体・・・
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林 正寛 | ||