叶わぬ願い(№775)
2025/9/1 | ||
以前、気象予報士のどなたかが、ここ最近、おかしくなってきたものとして、「若者、言葉、気候」の三つを挙げておられた。
「最近の若い者」と「言語の乱れ」は、どの時代であっても大人たちの嘆きの対象の一つになってきたように思うが、「気候」に関しては、全世界的に見ても、確実におかしい。
この夏の暑ときたら、「暑い」をとっくに通り越して、もはや「熱い」
幼いころの夏の記憶というと、朝の涼しいうちにラジオ体操で体を動かしたこと、井戸の水を汲んで冷やしておいたスイカに、縁側に腰かけ顔をうずめたこと。
エアコンの無い時代だったけれど、扇風機が一家に1台あれば十分過ごせたし、夕方にザッと夕立が降れば、空気はひんやりとし、そのまま夜は蚊帳の中でスヤスヤと眠ることができた。
試しに、私が幼いころに過ごした島根県における昭和45年の気象庁のデータ(松江市)を検索してみた。
8月の最高気温の平均は、約32℃で、8月31日には、26.5℃まで下がっている。熱帯夜は、2日しかない。
そんな昭和45年のオリコンシングルセールスの年間第1位だったのが、前年に発売され、当時6歳の皆川おさむ氏が歌っていた「黒ネコのタンゴ」である。
今でもオリコン第1位の最年少記録だということを、7月に皆川おさむ氏の訃報の中で知った。
♪~ きみはかわいい僕の黒ネコ 赤いリボンがよく似合うよ
口ずさんでみたら、1番はよどみなく歌えた。
しかし私は、黒ネコのタンゴよりも、置鮎礼子氏が歌っていたB面の「ニッキ・ニャッキ」の方が好きだった。
♪~ニッキ ニッキ ニャッキ ニッキ ニャッキ ムッキ ムッキ
ちょっと何を言ってるのかわからないが、とにかくこの言葉を言えば、嫌いなにんじんや玉ねぎ、お魚が消えてしまい、大好きなラーメン、卵焼き、シュークリームやチョコレートが出てくるというもの。
夢のあるなんて素敵な魔法の言葉なんだろうと、私は当時、毎日のように、ニッキニャッキと唱えていたが、ついに願いは叶わなかった。
「ニッキ ニッキ ニャッキ ニッキ ニャッキ ムッキ ムッキ」
久しぶりに言葉にしてみた。
― 早く涼しくなりますように。
やはり願いは叶いそうにない。
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林 正寛 | ||