呪文を唱えた件。

呪文を唱えた件。

  2015/05/11  
     
 

3月、売り出しを開始した奈良県大和郡山市の戸建住宅にお客さんを案内するために、クルマで向かっていたときのこと。

 

日曜日だったので、大和郡山市内に入ってから道が渋滞し出した。私にとっては不慣れな道をトロトロと進んでいるうちに、右の車線にいるのは自分のクルマだけだと気が付いた。

先を見ると、2車線が1車線に狭まり、右から左へ合流していた。

 

渋滞の中、ゆっくりと左へ入ろうとしたところ、後続車からバンバン、クラクションを鳴らされた。

バックミラー越しに見ると、助手席には奥さんと思われる女性が無表情で座っていて、後部シートには3歳~5歳くらいの子どもが二人乗っていた。

 

家族連れで地元のナンバー。おそらく普段から使い慣れた道であり、ここで合流して車線が減ることも承知していたと思うが、まったく、性格が悪いというか、私のクルマを入れさせまいとしてクラクションを鳴らして間合いを詰めてくる。

 

― まあ、少しくらいぶつかってもいいか。

 

と、クルマを突っ込ませて割り込むことはできたが、後続車のクラクションが鳴りやまない。

そのうち、ライトを点灯させてパッシングしてきたのには、我慢ならず、よほどクルマを止めて降りようかと思ったが、渋滞のためお客さんとの約束の時間が迫っている。

 

弁護士の先生から売却を依頼された不動産にお客さんを時間どおりに案内することと、後続車の性格の悪いスカタンを相手に時間を潰すことのどちらが大切かを天秤にかけることで思いとどまり、「短気は損気、短気は損気…」と頭の中で呪文を唱え、そのまま我慢して現場へクルマを走らせた。

 

HQ153_72A.jpg

 

 

近畿自動車道に「八尾」という出口があり、しょっちゅう、1キロくらいの出口渋滞を起こしている。

私は普段、「八尾」を使うことはほとんどなく、渋滞を横目で見ながらさらに南へ走ることの方が多いが、それがこの前、「八尾」を出て現場へ行くことになった。

 

出口まで500メートルとなり、出口に向かってクルマを左へ寄せたところで、そのかなり手前から渋滞してクルマが並んでいることに気が付いた。

 

渋滞の列に割り込まないと「八尾」から出られない。

割り込めば、またクラクションを鳴らされるんだろうなと思いながら割り込むと、案の定、バンバン、鳴らされた。

 

渋滞でクルマが動かない中、クラクションを浴び続けていると、後続車から泉谷しげるのようなオソロシイ顔をしたオジサンがわざわざ降りてきて、私のクルマに近づいてきた。

 

― そんなに腹が立つのかねぇ。まったく料簡の狭いやつだ。

 

待ち構えていると、前のクルマが動き出したので、私はクルマを前へ進めた。

しげるは、後ろのクルマから「早よ行かんかい」とクラクションを鳴らされる羽目になり、慌てて自分のクルマに戻り、私の後を追うとしたが、私のクルマとしげるのクルマの間にできてしまった大きな車間に、私のようなクルマが次々に割り込んできて、しげるは私から引き離された。

 

こうなると、しげるの文句も聞いてみたかった気がしないではないが、ともかく事なきを得た。

 

そして、私は、しげるを反面教師にして、また呪文を唱えた。

「短気は損気、短気は損気…」

 

  

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

 大阪市北区南森町2-2-9

     南森町八千代ビル8階

 

 TEL / 06-6312-0526

 FAX / 06-6312-0528