そんなバカな…。

そんなバカな…。

  2015/07/06  
     
 

「ミスをするたびに上司が怒鳴ることを会社の人事課に相談したところ上司から仕事を与えられなくなった」

 

「店長から日常的に『バカ』『おまえ』などと言われ、精神的苦痛から退職に追い込まれた」

 

労働者と企業のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決する「個別労働紛争解決制度」の利用状況によれば、労働相談の内、パワハラにあたる「いじめ・嫌がらせ」が2014年は6万2191件だった。年中無休で対応したとしても、一日あたり170件にも上る。

 

上記の2件は、パワハラの具体例である。

 

しかし、ミスをすれば上司は怒るし、ミスが続けば仕事は与えられない。当たり前じゃないだろうか。

 

社会に出れば、「そんなバカな…」、「そんな言い方しなくても…」、「そんな理不尽な…」ということの連続である。日常的に「バカ」「おまえ」という店長のレベルはあまりにも低いにしても、まぁ、世の中は大体、そんなものだろう。

 

今年の春ごろに新聞で読んだ出来事であるが、

新人がミスをしたので上司が叱ったところ、その新人は誰にも言わずに勝手に家に帰ってしまった。上司は、新人が出社したらこってり叱ってやろうと思っていたところ、あくる日、新人の母親が「親でも叱ったことが無いのにちょっとミスをしたからといって叱るとは、明らかにパワハラである。息子は精神的ダメージを受けた」と、わざわざ上司にクレームを言いに会社まで来たという―。

 

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社会は、学校とも違うし、サークルとも家庭とも違う別世界であるが、今の若者の多くは、小学校、中学校と進学していく過程で、本気で叱られた経験を持たないから、社会に対する免疫力(=理不尽を受け入れて立ち向かう力)がまるで備わっていない。

 

若者は、本当は何も知らないし何もできないのに、そんな自分に気が付きさえしないし、叱られたときの痛みも知らないから、いざ社会に出て頭ごなしにガツンと叱られたり、理不尽な場面にぶつかった時、ただただ驚き、うろたえ、ひるみ、対処ができない。

 

原因は、腫れものでも触るかのように若者を扱う親や教師、そんな風潮にさせた社会そのものにある。

 

親は子どもに機嫌よく塾に通ってもらいたいから叱れない、教師は親に何を言われるかわからないから生徒に指一本触れることはできない、上司はパワハラだと訴えられたくないから世間知らずの新人すら叱れない。

 

これも今年の春のことであるが、新人社員とのコミュニケーションの場として、飲み会ではなく料理教室を開催した会社の記事が新聞に掲載されていた。上司、先輩が新入社員と一緒にエプロンをつけて料理を作ることで親交を深めるのだという。

 

もういい加減にしないかと言いたいが、一日170件に象徴されるように世論は別のところにあり、風潮には逆らえない。

 

「そんなバカな…」

 

 

そう、それが社会というものである。

 

  

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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