夢の国。

夢の国。

  2015/12/12  
     
 

今年も残すところあとわずかになりました。

 

 

この時期、定番のフレーズであるが、私は、52年前のそんな時期に生まれた。

 

 

年末に向かう忙しくて寒いこんな時期に生まれるなんて、生まれながらの親不孝者であるが、こればっかりは私がコントロールのしようもない。責任の大半は、時期を計算しなかった両親にある。

 

 

それにしても、冬の生まれの割に寒がりなのは、どうやら産湯が少しぬるかったのかもしれない。

 

 

今年は、三島由紀夫が陸上自衛隊東部方面総監部に押し入り、自衛隊員に決起を促したあと割腹自殺を遂げた事件から45年になるそうだ。

 

 

三島由紀夫の事件は、歴史上のはるか大昔の出来事のように思えるが、そのとき私はすでに小学1年生であり、こんなふうに歴史上の事件などが発生した時期と自分の年齢を照らし合わせると、自分の年齢ポジションがよくわかり、つまらぬ衝撃を覚えたりする。

 

 

三島由紀夫の事件から3年後の昭和48年に「てんとう虫のサンバ」がリリースされた。

 

 

恐ろしいことに、リリースから40年以上経過するというのに、今でも1番はスラスラと歌えてしまうのは、「てんとう虫のサンバ」か「三百六十五歩のマーチ」くらいではないだろうか。

 

 

三島由紀夫の事件とは対極にあるこの歌は、奢侈安逸の時代と呼ばれた高度成長期の昭和元禄を代表するようなハッピーな曲であるが、皮肉なことに、リリースしたその年に勃発した第4次中東戦争をきっかけに原油価格が高騰し、日本はオイルショックに陥り、高度成長時代は終焉を迎えた。

 

 

このとき、私は小学4年生で、母の「おやつを買ってあげる」という罠にまんまと引っ掛かり、スーパーに行くとなんてことはない、トイレットペーパーの争奪戦に駆り出されただけだったことを、今でもよく覚えている。

 

― 昔からハニートラップには弱かったのか…。

 

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そして「てんとう虫のサンバ」から今年で42年。66歳になった松崎君と64歳になったえっちゃんのチェリッシュの二人が今年、大人用紙おむつのCMに出ていた。

 

 

CMでは、車でお出掛けしたチェリッシュの二人が渋滞に遭遇する。

 

 

えっちゃんが心配そうに「じゅうた~い」と口にすると、運転席の松崎君がすかさず、「今日はダイジョウブ」と笑顔で答える。そしてえっちゃんが「はっ!(そうだった)」と、わざとらしく安心するという設定。

 

 

時というのは残酷だと思う。

 

 

チェリッシュの二人もこんな年齢になったのかという衝動。そして、残念ながら、チェリッシュのCMをまったくの他人事だと白を切る傲慢さは自分にはすでにないことにも気づかされる衝撃。

 

自分はまだまだダイジョウブだなんて強がってみても、夏場はともかく、このごろの冬場のトイレの近さは産湯がぬるかったせいではあるまい。

 

 

 

お世話にはなりたくないが、とはいえ、そんなことで落ち込んでいても仕方がない。

 

 

将来、車で出掛け、「あなた、渋滞ですよ。ダイジョウブですか」と家人に聞かれたときは、

 

 

「安心してください、はいてますよ」

 

 

と、とにかく明るく返事だけは返そうと、心に誓った52歳の誕生日。

 

 

 

 

 

あなたと私が夢の国…。

  

 
  林 正寛  
     
     

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