わがままは男の罪。

わがままは男の罪。

  2020/2/25  
     
 

 

再婚した同級生を祝福するために、大阪、東京から当時のメンバーが岡山に集まった。

 

あのころ、一緒にいることが当たり前だったメンバーが、岡山の地でそろったのは、約40年ぶりだろうか。

 

 

ラリー・カールトンやジェフ・ベックを聴きながら、語り合った夢は、何一つ実現しなかった。

だれも56歳の自分を想像できなかったあの日。

 

あれから一人一人が、山を越え、谷を越えながら年を重ね、こうして再会できたことに感動を覚えた。

 

 

特に再婚の彼は、大きな大きな障壁を乗り越えたことと再会の喜びが重なり、涙をこらえるのに必死の様子だった。

 

みな、年を取ったのだ。

あの頃、歯を食いしばってこらえた涙が今ごろになって頬をつたう。

 

 

 

40年もの空白を埋めるにはあまりにも短い時間が過ぎ、今年の暖冬には珍しく冷え込んだその日の夕方、一人、また、一人と名残惜しそうに、それぞれの人が待つ場所に向かって帰っていく。

 

 

最後に、再婚した彼が奥様と店の前に並んで見送ってくれた。

 

彼はまた、口を真一文字に結び、涙をこらえている。

 

 

― “またな”なんて言いながら、握手だなんて照れるやないか。

 

でも、次は一体いつなんだと思うと、自然と握った手に力が入る。

 

 

 

 

新幹線が動き出してすぐにスマホが震え、彼からのラインがきたことを知らせる。

 

「今日はありがとう。泣きそうになりました」

 

パンダのスタンプがぺこりと頭を下げていた。

 

 

 

 

 

少年に戻れたわずかな時間がもう懐かしい。

 

 

とっぷりと暮れた暗闇を引き裂いて、新幹線が加速する。

 

 

  

   

   

 

 

 

  林 正寛