あと2年。

あと2年。

  2021/12/14  
     
 

 

 

大阪地方裁判所・高等裁判所のすぐ近くに天満警察署がある。

 

2階からまっすぐ1階まで続く階段をゆっくり降り、正面玄関を出たところで、バッタリ知り合いの弁護士の先生にお会いした。

 

こういうシチュエーションで弁護士に遭遇するのは大変よろしくない。

 

 

「おっ、ハヤシさん、何やらかしたんですか。弁護しましょうか」

 

― ほらね。しかも加害者扱い。

 

「古物商免許の関係で公安に書類を提出しにきただけですよ」

 

古物商免許は、営業所の所在地を管轄する警察署(公安委員会)が担当する。

 

「なんだ、それだけ?」

 

「そう、それだけですよ。何を期待しているんですか」

 

「いや、ハヤシさんのことやから。ハハハハハッー」

 

 

 

「偏見」を検索すると、「十分な根拠がないのに特定の集団や個人に対し抱く信念」とある。

 

良くないことではあるが、その人について回るイメージというのはそう簡単には上書きできないのかもしれない。

 

私がいくら「私ってまじめなんですぅ」と叫んでも、逆効果になるだけで、これまで私が世間に対し伝えてきたプロフィールや経験談は、もちろん真実なのだが、その真実から抱くイメージからすると、警察署から出てくる私は、「やらかした人」になる。

 

不思議なものだ。

 

私ってこんなにまじめなのに。

 

 

 

先月、上京し、久しぶりにノンフィクション作家の清武英利さんにお会いした。

 

この人はひたすら真実を求めて日本中を走り回り、それを書き記す、書き残すことを仕事にされている。

 

著書はドラマ化されるたびに華々しく宣伝され、発行部数も伸びる。

 

作家としてこれほど嬉しいことはないが、ドラマ化された途端、物語はフィクションとなり、真実とのギャップが生じ、清武さんが求めるものとは違ったドラマができあがる。

 

そこに毎回、ジレンマを感じると、苦しそうに胸の内を明かされていた。

 

 

 

今月、誕生日を迎えた。

 

認めたくないが、58歳になった。

 

それが真実である。

 

そして、これからも人生は続く(たぶん)。

 

有り難いことではあるが、そこには葛藤がある。

 

もういい加減、このあたりで時間が止まってくれないだろうか。

 

 

 

 

還暦まで、あと2年(白目)

 

   

 

   

 

   

 

 

 

  林 正寛