若葉の道Ⅱ
2022/1/18 | ||
私は普段、会社の近くにあるホテルの駐車場に車を止めている。
駐車場には、管理員が常駐し、私のように仕事で出たり入ったりする人を「出入り」(デイリ)の利用者として、宿泊者とは区別して管理している。
管理員は、慣れてくれば、車種とナンバーから私が「出入り」の利用者だと覚えてしまうので、外から戻ってきても、すぐにゲートが開く。
ところが、管理員が不慣れだと、まず、私のところまで走ってくる。
「ご宿泊ですか?」
「いえ、出入りです」
このやり取りがあって、ようやくゲートが開くことになる。
管理員は、20代と思われる若手の男女が中心で、他の駐車場とのローテンションで異動がある。
だから、利用する側も、数年ごとに管理員の不慣れ対応に付き合わされることになる。
あるとき、初めて外国人の青年が管理員としてやってきた。
まだ、日本語も不慣れな彼は、外出から戻ってきた私の車に走り寄ってきた。
「ゴシュクハクデスカ?」
「出入りです」
「アア、デモドリカ」
また、ある寒い日に出庫待ちをしていると、誰に教わったのか、揉み手をしながら、「イヤー、キョウハヒエルネ」
しかし、数年経った今では、日本語にも敬語にも仕事にもすっかり慣れ、他の誰よりもさばきが上手いし、他の誰よりも深々とお辞儀をし、他の誰よりも大きな声で「ありがとうございます」と言ってくれる。
ところが、「他」はというと、慣れるごとに対応が雑になるし、笑顔も挨拶も少なくなり、明らかに、新人のころよりもサービスが低下してしまっている。残念でならない。
最近は、新年に誓いを立てることもなくなり、立てたとしても、いつの間にか無残にも忘れ去り、忘れてしまったことへの罪悪感もなくなって久しいが、せめて、初心だけは忘れずにいたいものだ。
― 誠実に若葉の道を回想(オモ)うべし
今年も1年、よろしくお願いいたします。
|
|
|
林 正寛 | ||