更年期障害。

更年期障害。

  2022/6/7  
     
 

 

 

知床沖の観光船の沈没事故では、胸が締め付けられた。

 

楽しい観光が暗転し、冷たい海の底へ引きずれこまれたとき、何を思ったのだろうか。

その悔しさ、悲しみ。とても表現できない。

 

 

ストイックな二枚目俳優といつも笑いを届けてくれていた芸人さんの自死には言葉を失った。

 

ふたりは、家族と暮らすなかで孤独な死を選択した。

 

なぜなんだろう。

 

 

 

今年に入り、仕事で2件の孤独死案件の対応をした。

 

いずれも男性で室内はゴミの山。普通の人なら、とても直視できないほどのひどい汚損状態で、そのうち1件は、高度腐敗のため死因も特定できず、検案書では、不詳の死として処理されていた。

 

― 一体どんな人生だったのだろうか。最後に見た景色はなんだったのだろうか。

 

考えずにはいられなかった。

 

 

 

そして、2週間ほど前、20年来のお付き合いのある弁護士の先生が事故で亡くなった。

 

私のトッカイ時代は、睡眠時間を削りながらまさに粉骨砕身取り組んでくれた。

 

サービス精神旺盛なテニス好きなスポーツマンだったが、「なぜ、今、彼が」と思うと、とても納得できるものではない。

 

お通夜では、参列者も供花もそして悲しみも会場に納まりきれず、外まであふれていた。

 

 

 

― 生きる意味など考えない方がいい。わけがわからなくなるだけだから。

 

そうブログに書いてきたのは私だが、あらためて看取ることができなかった両親のことなども思い出したりしているうちにわけがわからなくなり、ブログも書けないでいた。

 

 

 

「ハヤシさん、そりゃ更年期障害だわ。たぶん」

 

あれこれと厄介な症状も出てきたので、かかりつけ医を受診した。

 

私は、ワクチン接種以外ではほとんど医者のお世話になることはない。

 

「ほれ、この薬を一日3回ね。すぐに楽になりますよ」

 

― なにが更年期障害だ。一番縁遠いじゃないか。

 

とも思ったが、四の五の言わず、一旦、医者の言うことを聞き、処方された薬を服用し始めた。くやしいことに幾分楽にはなった。

 

 

 

岡山時代の同級生にこのことをLINEすると、一人はコロナに感染中でそれどころじゃなく、もう一人は、すぐに返事が返ってきた。

 

“おれは不整脈に動悸、低血糖症や”

“この年になれば、何も無い方が不思議やろ”

 

 

「自分は不死身」と思っていた私がいかに傲慢だったということか。

 

 

 

 

 

スタンプのパンダが泣いていた。

   

 

 

 

    

 

 

 

  林 正寛