SWEET MEMORIES。
2016/01/27 | ||
今月、毎年恒例となっている第一生命保険会社による「大人になったらなりたいもの」のアンケート結果が発表された。
男の子の1位は、6年連続でサッカー選手、女の子は19年連続で食べ物屋さんがトップだった。他には、学者や博士、医者、幼稚園の先生など。 子どもたちの夢は膨らむ。
私のことなどどうでもよいが、私は若い頃、舞台俳優や映画俳優に憧れた時期があり、ミュージカル劇団のオーディションに申し込んだり、ある女優さんの映画デビュー作の相手役募集に応募したこともある。また、ある女性専門のファッション雑誌が男性専門誌を出版することになり、そのモデルのオーディションに申し込んだこともある。
自信は無かったし、できもしないことを口にするのもどうかと思い、家族にも言わずに一人で申し込んだ。
音楽が好きだったので、音楽関係の仕事もしてみたかった。
夢を失うことは、人生の宿命のようなもので、年を重ねるごとにひとつずつ置いてきてしまったが、それでも、こうして新しい年が始まれば毎年、夢や希望といった若々しいものではなく、個人的には、会社経営上のことを含めた欲望と言った方がふさわしいものや、家族や取り巻くすべての人たちの幸せといった漠然としたものであったりするが、何やらワクワクした気持ちになる。
この正月もそんな新たな年への期待を胸に神社へお詣りに行き、おみくじを引いたら凶が出た。 おそらく、人生初の凶ではないかと思う。
よく、大凶は滅多に出ないから大吉よりも縁起がいいなんてことを耳にするが、明らかに負け惜しみだろう。大凶はどこまでいっても大凶であって、大吉よりも縁起が良ければ大吉は立場がない。
とはいえ、やはり、ものは考えようであって、人生初の凶が出たということは、これまでせいぜい吉か小吉くらいにしか例えることのできない私の平凡な人生からの脱却を予言するものであるかもしれない。
今年は、アスキット・プラスが検索ワードの№1となり、「明日はきっとプラス」が流行語大賞を受賞し、代表者の私が年末の紅白歌合戦の審査員に選ばれるとか…。
まぁ、なんというか、こうして心がすぐ緩みがちになる私には凶がちょうどいいくらいかもしれない。 おみくじには私にピッタリの、注意を促すようなことがこれでもかと書かれていた。
そもそも、おみくじを買うときに、あのまま3番に並んでおけば良かったのに、つい、2番の窓口にいた巫女さんにつられて列を変えたのがいけなかった。
今年は欲を捨て、慎重に行動しよう。
二次会に行くのは止めよう。
「今年はお酒を控えめにして、できるだけ早く家に帰ろうかと思う」
「あなた、毎年、年始にそうおっしゃいますよね」
「……」
「できもしないことを口になさらない方がよろしいんじゃないですか」
「……」
失った夢だけが美しく見えるのは何故かしら―。
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林 正寛 | ||