紙一重。

紙一重。

  2016/04/28  
     
 

少し前のことになるが、自宅の近くにオープンしたカレー専門店へ日曜日のお昼を食べに家人と行ってきた。

 

ご当地カレーというやつで、関西では初出店らしい。

 

家人はカレーが好物な上に、こうしたキャッチに女性は弱い。

 

私はカレー自体嫌いではないが、香辛料に弱いので少し辛いだけでも大量の汗を搔く。私は汗を流しながら食事をするのが嫌で、だから1年に1回程度だろうか、よほど食べたくなったとき以外は自分からカレーを選択しない。

 

家での夕食も私の前だけカレーは出てこない。

 

よく、たったそれだけの理由でカレーを食べないのですかと驚かれるが、たったそれだけの理由でカレーは食べない。

 

この日は、今日の休日を無事に過ごすことを何より優先し、家人の意見に従った。

 

 

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「行列ができると思うので、あなた先に行って並んでおいてください」

 

― まだ11時前じゃないか。

 

大体、うちの家の近所のカレー専門店ごときで行列ができるわけないし、並んでまで食べたり物を買ったりすることを私は好まない。

 

「なにもそこまでして…」

 

と返そうとしたところで、家人から送られてくる無言の圧力に危険を察知して家を出た。

 

私は亭主関白だが、腰は低い。

 

 

店に行くとすでに10組ほど並んでいた。

 

念のため、行列の一番後ろに並んでいる若いカップルに聞いてみた。

 

「このカレーのお店に並んでるんですよね」

 

すると、何故だかカップルの前に並んでいたオバチャン3人が答えてきた。

 

「せやで。お兄ちゃんも早よ並ばな、いつまで経っても食べられへんで。ギャハハハハー」

 

まだ、一口もカレーを食べていないのに、額に大粒の汗が流れてきた。

 

 

私の後ろにも並ぶ人がいて、行列は長くなっている。

 

試しにスマホで店の名前を検索してみると、ついこの前まで影も形もなかったこの店の情報がずらりと出てきて、なんだか恐ろしい気がした。

 

しかし、今はこの盛況でも、ネガティブな情報がちょっとでも出てしまえば、あっという間に客足は遠のいてしまう。このごろは客の一人一人がグルメリポーターとなり、味、盛付、待ち時間、従業員の対応などがすぐにSNSで拡散されてしまう。

 

盛況と不況はまさに紙一重である。

 

 

家人は予想どおりの行列に満足そうで、しかも、私が早めに行って並んでいたため、行列の割には比較的スムーズに人気のお店のカレーを食べることができて上機嫌である。

 

何か(亭主関白)を手に入れようと思えば、ある程度の犠牲(食事を妻の嗜好に合わせること)と努力(家では腰を低くすること)は仕方がない。

 

つまり、亭主関白とカカア天下も紙一重ということだ。

 

 

世の中は微妙な紙一重で成り立っている。

 

 

♪~ブサイクもイケメンも紙一重

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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