断片。
2017/6/1 | ||
仕事上、いろんな方の人生の断片にふれる。
案件は、債務整理、破産、離婚、遺留分減殺、相続財産、孤独死、自殺、成年後見、遺言執行などで、楽しそうな案件は、ほとんどない。
その事情、至った背景などは、案件ごとに様々であるが、差し障りが無い範囲で、弁護士の先生、ご本人、関係者の方などにできるだけ聞くようにしている。
特別それが私の仕事の成果に影響を及ぼすわけではないけれど、機械的に売ったり処理したりするのではなく、その方々の人生の断片に少しでも触れ、できないかも知れないけれど、思いというか空気感のようなものをわずかでも共有できればと考えている。
「あのころ事業はとても順調だったんだけどね」
「今では想像もできないが、昔は仲が良かったんだ」
「健康だけが取り柄のような人だったのに」
孤独死された方の部屋に入れば、ついこの前まで、確かにこの場所で暮らしをしていた断片がそこら中にある。
ひとりだけの空間で、予期せぬ死を前にして最期に何を思い、何を目にしたのだろうか。
そして、思いがけず突然失われた人生の後片付けをまったく見ず知らずの私がするわけで、亡くなった方からすれば、おそらく、「なんでお前なんだ」と叫びたいところだと思う。
私とすれば、本当に「私で申し訳ない」気持ちで一杯なのだが、せめて断片に触れ、わずかでも共有し、きちんと整理をしてさしあげたい。
まさかの倒産、夫婦・兄弟姉妹間の争い、予期せぬ死、自らそうするしかなかった死。
人間同士のつながりのもろさ、人生のもろさを感じる。
ちなみに、保険会社のデータによると、孤独死の平均年齢は、男女ともに60歳と思いのほか若い。
また、孤独死のうち、男性が占める割合は8割を超え、孤独死が発見されるまでの期間も男性の方が長い。
男性は、地域コミュニティへの参加が苦手だからね。
日ごろの存在感が無いから、姿が見えなくなっても気づいてもらえない。
男って、 生きていても孤独、死んでも孤独なんだ。
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林 正寛 | ||