魔物が起きないように。
2018/4/24 | ||
『人間は、3分の1は獣、3分の1は機械、3分の1は堕天使。獣で機械で悪魔。それが人間だ』
フランス文学者の渡辺一夫は、戦争直後の随想にこのように書き記している。
誰の心にも魔物は棲んでいる。
私たちは、その魔物が起きないよう心をコントロールしながら生きているのだ。
上司から理不尽に怒られようと、好きな女性に冷たくされようと平静を装い我慢する。ときに苦笑いでごまかしたりもする。
飲みに行きたくても、がんばって帰る。
飲みに行きたくなくても、がんばって飲みに行く。
人は、理想と現実の狭間で苦しみながらも、いつか苦しむことを放棄し、現実に生きようとするが、その現実の世界には、魔物が大好きな怒りや悲しみ、欲望が溢れている。
ほんと、やりきれない。
渡辺一夫は、さらにこのように続けている。
『そして人間は、いかに不完全で生臭い存在であるかの自覚を忘れてはならない。恐ろしい本性を克服する努力を諦めてはいけない。狂気、不寛容、暴力の発作が二度と起こらないようにしなければならない』
いくら腹が立っても、上司をピストルで撃ってはいけない。
会食の席で女性に向かって「胸、触ってもいい?」なんて口に出してはいけない。
もちろん、「手、縛っていい?」とか、「抱きしめていい?」なんてことも言ってはいけない。
努力を怠ってはいけません。
うっかりでは済まされません。
気を抜かないように最大限の注意を払いましょう。
魔物が起きないように。
魔物が起きないように。
魔物が起きないように。
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林 正寛 | ||