無限ループ。
2018/11/1 | ||
NIMBY(ニンビー。Not In My Back Yard‐必要性はわかるがうちの近所にはこないで)の対象となる嫌悪施設には、保育園、幼稚園、小中学校などの学校施設も含まれるが、南青山における児童相談所の建設をめぐる反対住民の意見が生々しい。
一等地である南青山のブランド価値が落ちると言う。
「ランチの単価が1600円もする一等地に児童相談所はそぐわない」とか「ネギ1本買うのにも紀ノ国屋に行っている」とか…。
ランチの単価やネギの話はさすがに品が無さすぎるが、ただ、住民たちは、南青山の有形無形のブランドに多額のお金を支払い、そこでの生活に固有のステータスを確立しているわけである。そこへいきなり児童相談所と言われても、反対もしたくなるだろう。
「子どもの未来のために」
誰もがわかっているテーマなのに、それだけでは押し切れない。 NIMBYは深刻である。
今の季節。 電車での移動中に、遠足の行き帰り途中の小学生の団体に遭遇することがあるが、大概は車両ごと大騒ぎになるので、私はNIMBYと化し、別の車両に移動する。
ところがこの前、遠足帰りの小学生がたくさん乗っている車両にうっかり足を踏み入れてしまったものの、どうも様子がおかしい。
なにがおかしいかというと、子どもたちは一言も発せず、静かに車両に揺られているのだ。ひそひそ話もない。
先生方の指導の成果だろうが、その空気はどこか異様で、子どもたちがいるのに子どもたちの元気な声が聞こえてこないのは実に息苦しい。
でも、喧しいのも嫌だし…。
人間の矛盾した心理に出口は無い。
まるで無限ループのように―。
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林 正寛 | ||