自分が一番知っている。
2018/12/26 | ||
私は、日々車を利用するが、ウインカーを出し車線変更を要求しているのに入れてくれないことはよくある。やむを得ず強引に入ると、まるでこの道路は自分のものだ、入ってくるな、と言わんばかりに、激しくクラクションを鳴らしてくる奴がいる。 ときにパッシングまでして、その後、うしろからあおってくるアホもいる。
減速して車線をゆずる。なぜ、こんな簡単なことができないのだろうか。
ハンドルを握ると性格が変わる人がいるというが、そんなことはない。そもそもの問題だろう。 あおり運転をするような輩は、陰湿で自己中心的で傲慢極まりないに決まっている。
こんなアホのために夫婦二人が命を落とした東名高速道路の事故は、実に痛ましい。 しかし、悲しいかな、人間は完璧ではない。いや、むしろ不完全の象徴かもしれない。
『人間は、3分の1は獣、3分の1は機械、3分の1は堕天使。獣で機械で悪魔。それが人間だ』 フランス文学者の渡辺一夫は、戦争直後の随想にこのように書き記している。
誰の心にも魔物は棲んでいる。 そいつがいることは、自分が一番知っている。 私たちは、魔物が起きてこないよう心を懸命にコントロールしながら生きているのだ。
渡辺一夫は、さらにこのように続けている。 『そして人間は、いかに不完全で生臭い存在であるかの自覚を忘れてはならない。恐ろしい本性を克服する努力を諦めてはいけない。狂気、不寛容、暴力の発作が二度と起こらないようにしなければならない』と―。
先の天皇誕生日に、平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵すると、天皇陛下のお言葉があった。 本当に良かったと思う。 しかし、一方で世の中は、狂気、不寛容、暴力で溢れている。
来年は、新しい時代の幕が開くけれど、時代は変わろうとも、人間が、不完全で生臭い存在であることの自覚を忘れてはならないこと、恐ろしい本性を克服する努力を諦めてはならないことに変わりはない。
獣で機械で悪魔。
それが人間だから―。
そのことは、自分が一番知っている。
皆様、年末年始はどのように過ごされますか。 ご家族と一緒ですか。 久しぶりに実家のご両親と一緒ですか。 大好きな恋人と一緒ですか。 一人でのんびりと一杯やりますか。
皆様、今年一年お疲れ様でした。 そして、アスキット・プラスを応援していただきありがとうございました。 来年、また、お会いしましょう。 皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
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林 正寛 | ||