それが何かはわからない。

それが何かはわからない。

  2020/10/2  
     
 

 

作家の村上春樹さんのある随筆でのことば。

 

「人間は生涯に何か一つ大事なものを探し求めるが、見つけられる人は少ない。にもかかわらず我々は探し続けなくてはならない。そうしなければ生きている意味がなくなるから」

 

 

わからなくもないが、美しすぎる。

 

生きていることに意味もへったくれもあるもんか、生きているだけで十分じゃないか、と私は思う。

 

生きる意味とか理由なんて考えだしたら、そりゃあ訳が分からなくなるだけだから、やめた方がイイ。

 

そのあたりの心情を永六輔さんが遺した言葉でフォローしてくれている。

 

 

「何が運がいいって、こうして生きていることです。生きててごらん、面白いから。生きているだけで面白い」

 

 

しかし、そう易々と折り合いをつけることができるほど、生きることは簡単ではない。

 

 

人生の命題はわかりにくい割に、選択肢は、生きるか死ぬか二つしかない。中間(休憩みたいなポジション)がなく、どんどん時間が過ぎていくから、それは苦しい。

 

 

 

日本全国の8月の自殺者は1849人だったとのニュースを目にした。

一日あたり約60人が死を選んだ計算になる。

 

 

遺されたものは、死を選んだ意味や理由を知りたいと思うが、生きることをやめたという以外、最後の最後、明確な答えは見つからないのかもしれない。

 

生きることに明確な答えがないのと同じように。

 

 

 

 

人はみな、もう一つの何かを胸に抱えたまま生き、そして死んでいく。

 

 

それが何かはわからないけれど。

 

 

 

  

 

 

 

   

 

 

 

  林 正寛