右肺自然気胸。

右肺自然気胸。

  2013/01/15  
     
 

2011年年1月11日、夕食後自宅でタバコを吸っていると、何の前触れもなく右の背中あたりでプチッと音がして、同時に右の胸に強い痛みを感じた。

 

痛みでよく眠れないまま、翌1月12日。延ばし延ばしにしていた運転免許証の更新期日最終日のため、痛みを我慢して教習所へ行った。

 

更新手続きを終えて一旦、帰宅したものの、呼吸も苦しくなり、声も出にくくなってきたため、さすがにこれはマズいと思い近所の病院へ行ってレントゲン撮影をしたところ、右肺自然気胸と診断された。

 

右肺に穴があき、そこから空気が抜けて肺が潰れてペッチャンコになっていた。しかも、しばらく放置していたため悪化させてしまい、もうこのころには、激痛のため右腕を動かすこともできなくなり、左手だけでクルマを運転して紹介の総合病院へ向かった。

 

すぐに処置が開始されたが、これが極めて原始的で、潰れた肺に直径5ミリほどのゴムのパイプを挿入して、空気を入れて肺を膨らませるという方法。

 

パイプは、スターウォーズのR2-D2に似た機械につながっており、そこから空気が送り込まれる。それで肺の穴は自然と閉じるらしい。

 

麻酔をして右の胸に数センチほどメスを入れてそこからパイプを入れるのだが、肝心の肺というか、肺を覆っている胸膜までは麻酔が効かない。つまり、麻酔が効かない生身の体の肺にパイプを突き刺し、さらに奥深く約20センチ、パイプをズズズッと挿入するわけだ。この痛みは尋常ではなかった。

 

そこからは、実に不自由な入院生活である。

ずーっと胸にパイプが挿入されている状態で、どこへ行くにもR2-D2を連れて行かないといけないので、かなりうっとうしい。

 

パイプが気になって熟睡できない、タバコは吸えない、メシはまずい、隣のおっさんのいびきはうるさい。

「まゆゆ」や「ぱるる」みたいな看護士さんはいない…。

 

R2-D2には、肺機能の回復の目安となる水位計が付いていて、水位が一定の水準まで上昇しそのまま維持すると、それは肺に空気が満ち溢れ穴がふさがったサインであり、退院の判断となる。

 

入院は4日~5日の見込みだったが、水位計は上昇せず、肺の機能が回復しない。これで回復しない場合は、全身麻酔して肺の穴をふさぐ手術をしなければならない。

 

手術だけはなんとしても避けたい。頼りはR2-D2。励ましたり、なでたり、怒ったり。それなのに、R2-D2は沈黙したままで水位は上昇しない。

 

明日もこのままなら手術の準備に入りますと医師に宣告された入院7日目の晩。私は、水位上昇に関する最後の指示をR2-D2に出した。

 

そして、あくる朝、日の出と共にR2-D2はついに覚醒した。少しずつ水位が上昇し、翌日もそのまま下がることなく一気に退院許可にたどり着いた。

 

パイプを抜く処置がまた原始的で、医師と看護士の二人が「せーの」で抜きますねと…。耳を疑い、「えっ?嘘でしょ、ちょっと待っ…。」「せーの、ズボッ!」

痛くはなかったけど、肺がズルッと飛び出る感じだった。パイプを抜いてできた穴から空気がまた抜けたりはしないのだろうか…?

 

 

そして、役割を終えたR2-D2が看護士に背中を押されて無言で部屋を出ていった。

 

ありがとうR2-D2。うっとうしいなんて思ってごめんね。

 

  

 
  林 正寛  
     
     

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