桜咲く。
阪神タイガースの勝敗に一喜一憂する苦悩の日々が始まる。
甲子園球場に近い尼崎の商店街では早くも優勝マジック144の点灯式が行われ、マジックボードに
「144」と掲げ、集まったファンが六甲おろしを熱唱してリーグ制覇を祈った。
このマジックボードは、尼崎えびす神社でお祓いまで受けるという念の入れようである。
まったく、阪神ファンの「阪神愛」には驚かされるが、気持ちはよくわかる。
負けても、負けても、負けても、負けても、時々、劇的な勝利をあげたりする。
肝心なところであと1本が出ない、ここぞというときに必ず打たれる。
期待を持たせては、裏切られる。
今年こそはと思うが、どうせ負けるに決まっている。だから、せめて開幕前の今だけは夢を見させて
ねと、マジック点灯式をこのタイミングで行うわけだ。
決してふざけているのではない、むしろ真剣そのもの、大まじめである。
今年も桜の便りが届き始めた。
わずか1輪の桜のつぼみがほころんだと大喜びする日本人は、やはり刹那的なのだろう。
冬の寒さに耐えて一斉に開花した桜をこの世の春と称え、はらはらと散りゆく姿を愛惜し、桜吹雪に
身が震えるほど感動する。
人生の儚さ、切なさと「桜の一生」が重なり合うのと同時に、阪神タイガースのペナントレースが同
期する。
今年も、はらはらと散りゆく姿が目に浮かぶ。
だから、開幕前にマジック点灯式を行い、刹那の快楽に酔う。
我が阪神タイガースは、永遠に不滅だ!。
林 正寛