練習。

練習。

  2016/05/24  
     
 

先日の土曜日、長男の中学校に運動会を見に行った。

 

3年生なので、中学最後だし、高校になればもう見に行くこともないだろうから、仕事を休んで最後までしっかりと見た。

 

その日は快晴で、日中の気温が30度近くまで上がり、すっかり日に焼けてしまったが、子どもたちの競技する姿は、日差しよりももっと熱く輝き、まぶしくて仕方がなかった。

 

まず、手を抜いたり、駆け引きしたり、ごまかしたりしているような子は一人もいない。

 

走るのが得意な子も苦手な子も、踊りが好きな子も好きではない子も、痩せた子も太った子も、背が高い子も低い子も、みんなが一生懸命。

 

リレーでは、断トツでビリを走っているクラスの子は、もう前を走るクラスの子の背中が見えなくなるくらい引き離されていても、あきらめず、前だけを見て必死に走り、次の子へバトンを渡す。

 

プログラムの最後には3年生全員で踊りを踊るのだけれども、最初に挨拶をする学年代表の女子は、もうこの挨拶の時点で感極まってしまい涙が止まらない。

 

踊り終われば、それはもう、汗だか涙だかわからないくらいになって、抱き合う子、ハイタッチをし合う子、茫然と立ち尽くす子、恥ずかしそうにうつむく子。

表情や表現は様々だけれど、初夏の西日に子どもたちの姿はキラキラと輝いていた。

 

社会に出れば、外の妖怪やら自分の心に棲む悪魔と戦わねばならず、今日のこの子たちのように、いつまでも無色透明ではいられないけれど、すっかり忘れてしまっていたものをたくさん思い出させてもらった。

 

 

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うちの子は帰宅するなり、「練習の時はいつも一番やったのに」と負けたことを悔しがっていた。

 

私は、「どれだけ練習したとしても、上手くいかないことはある。100%の準備なんてのはありえないし、着地点が見えないまま暗闇に向かってジャンプしなければならないこともある。努力が報われるとは限らない」と口にしようとしたがやめた。したり顔の大人の意見なんて今日の彼には陳腐なだけだろう。

 

 

私は、子どもたちの姿に心を打たれ、この際、自分の心に棲む悪魔を倒し、おかしな駆け引きやごまかしはせずに、これまで出せずにいた領収書を経理(家人)に提出しようと、練習を始めた。

 

以下、練習。

 

「これ、頼む。いや~、出すのをすっかり忘れてたわ」

 

「あら、あなた、楽しそうなところでお食事されているのね。会社の経費でいいのかしら」

 

「ま、まあ、接待だからね」

 

「2軒目はともかく、3軒目もですか?」

 

「あ、ああ…、急な会議でね…」

 

「あら、こんな夜中に新地で会議ですか、へぇ~」

 

 

何べんやっても、どうにかごまかそうと、心が悪魔に支配されてしまう。

 

 

 

どれだけ練習しても上手くいかないことはある。

 

 
  林 正寛  
     
     

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