負けるな。

負けるな。

  2016/05/30  
     
 

子どものころ、嘘がバレると母から、嘘をつくような人間は、死ぬと地獄に落ち、閻魔大王に舌を抜かれると聞かされ、これはマズいことになったと思った。

 

他にも、この世で人を騙した人間は、地獄で針の山を歩かされるだの、人を傷つけた人間は、血の海に沈められるだのと散々、脅かされた。

 

地獄については、残念ながら、この世にいる人間は誰もがその存在を100%否定することはできない。だから母の脅しは、大人になってからも教訓となった。

 

それともう一つ、話の根拠は不明であるが、自殺をして親より先に死んだ人間は、暗くて狭いところに閉じ込められるということも、幼いころ母から聞いた。

 

こんな私でも、もしかすると死んだ方が楽になるのではないかと、そんな思いが頭をよぎってしまうようなこともあったが、そんなときに決まって頭に浮かぶのが、死んだ後に暗くて狭いところに閉じ込められている自分の姿であり、これはかなわん、死んでも楽にならんナと思い直したものだ(先に地獄に回される可能性もあるし…)

 

まあ、思い直せるくらいだから、辛さの度合いも大したことはなかったのかもしれないが、時が経てば、辛い記憶も思い出になり、辛さの度合いも忘れてしまう。

 

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昔、あれほど悩んだことも、今ではどうにかなっているし、ずいぶんと苦労したことも、痛みは消えつつある。

 

生きていれば心がちぎれそうになるくらい辛いことに遭遇することもあるが、今、たとえ絶望したとしても、これから先もずっと絶望かというと必ずしもそうではないだろうし、時が経てば形は変わっていく。

 

「過去」には勝てないし、負ってしまった哀しみや痛めた心の傷は、完全に消えることはないけれど、「今」を乗り越えることができれば、「未来」は必ず手に入る。

 

どれだけ笑われても、バカにされても、嫌われて無視されても、自分の居場所が無いと感じても、「今」を乗り越え、生き残ることだけを考えよ。

 

そして、幸せになること。

 

今が幸せなら、勝てない過去のことも水に流すことはできるし、人のことも許せる。「まぁ、いいか」って。

 

 

だから、負けるな。

 

 
  林 正寛  
     
     

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