普通の人間。

普通の人間。

  2016/10/19  
     
 

芥川賞受賞作「コンビニ人間」を読んだ。

 

芥川賞とか直木賞の受賞作は、どういうわけだか読みづらいものが多いように感じてきたが、この作品は案外サラッと読むことができた。

 

ただ、内容は、なかなか意味深で、人は多くの場合、時期が来れば職に就いて、誰かと結婚し、そして子どもを授かり、さらにまた仕事で稼いでといった段階を踏んでいくが、そのスタイルが「普通」なのか、そうでない場合、主人公のようにコンビニバイト一筋18年のような生き方は、異質なものとして社会に受け入れてはもらえないのか、本人がそこに居場所を見つけてさえいればそれでいいのではないかといった、生きる定義とか人生の価値観のようなものを考えさせられて、とても興味深かった。

 

主人公は、どう見ても「普通」ではない、やや異質な考えの持ち主であるように映るが、それもこちら側(自分が「普通」だと思っている側)の主観やら偏見でしかなく、主人公は間違いなく、自分の居場所を定め、自分の人生を生きている。

 

「ふつうー、そうでしょ!」なんて、会話の中で軽々しく口にすることがあるけれど、その「普通」は誰が決めたことなのか。自分だけの価値観だったり、他人の主観が混じっていたり、Twitter上で知らない誰かが呟いたことが根拠になっていたりして、案外、「普通」はわかりにくい。

 

それに最近は、周りの情報に振り回され、他人のことばかりを気にして、他人の言動に興味を持ち、そして他人の失敗を発見すれば攻撃するような、まるで自分の人生を生きていないんじゃないかと思えるような人もいる。

 

この芥川賞受賞作は、決して独りよがりではなく、自分スタイルで自分の人生を生きるということはどういうことなのか、「普通」とは何なのかを考えさせられた。

 

 

 

ちなみに私はよく人から、「変わってる!」と言われるが、自分は自分のことを、いたって平凡な「普通の人間」だと思っている。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

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