三日遅れの七草粥。
2017/1/11 | ||
「あなたのおかげで我が家の個人情報がダダ漏れです」
家人に日ごろから注意をされているので、詳細は記載できないが、その家人が、年始早々、入院・手術をすることになった。
昨年末に急遽決まった。
家人の入院はお産のとき以来だったので、かなり戸惑った。 なにせ、家のことが私はなにもできない。
家のいたるところに注意を促す付箋が貼られ、息子の塾のスケジュールや食事、服用している薬のことなどあれこれ指示を受けたが、どうにも頭に入らず、にっちもさっちもいかず、結局、娘に応援に来てもらった。
最初から娘を頼っておけば良かったのだが、自分でやってみようと思った私がバカだった。 普段やっていないものがこの急場でできるわけがない。
持つべきは娘だと今回ほど思ったことはないが、あれほど手が掛かった娘にこうもシャキシャキと家事をこなされると、なんだか遠い星からやってきた人みたいで、ちょっと複雑な気持ちがした。
家人の手術は難しいものではないが、それでも、麻酔科医と担当医から事前の説明を受けると妙にキンチョーするもので、説明が終わった後も、万が一のリスクだけが頭に残る。
だから、手術が終わり、手術室に呼ばれ、執刀医から無事に終わったことを告げられると、かけ引きなしに安堵した。
ちなみに、説明が終わった後、執刀医がメガネの奥の瞳を光らせながら、こう質問してきた。
「ところで旦那さん、切り取った例のブツをご覧になられますか」
私は、人差し指で自分のメガネの真ん中を押さえながら上に持ち上げるようにしてニヤリと笑い、
「先生、当たり前じゃないですか」
というわけで、家人が所有していたブツをしっかりと見させていただいたが、それがどういうものであったのかは、個人情報(?)なのでここでは割愛する。
家人が手術室から出てくるのを待ちながら、酸素マスクやら、あれやこれやをカラダに付けられ、全身麻酔も覚めやらぬ、まるで死にそうな表情の家人をこの際写真に収め、今後、責められたときの魔除けにしようとスマホを握り締めていたが、家人は出てきたときには、もうしっかりと目覚め、普段とあまり変わらぬ表情をしていた。
― 生命力はゾンビ並みかもしれない…。
毎年欠かさず7日に食べていた七草粥が今年は10日にずれ込んだが、今年はお粥の優しさがグッと胃に沁み込んだ。
今年は七草粥が三日遅れた。
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林 正寛 | ||