今は昔。
2017/3/22 | ||
「お隣の○○様にお荷物をお預かりいただきました」
私が子どものころは、留守をしていて宅配便を受け取ることができなかった場合、宅配業者の人がこうしたメモを玄関に差し込んでいた。
メモを見た母がお隣に荷物を取りに行き、品物がお菓子や果物など分けることができるものであれば、お預りいただいたお礼にと、おすそ分けを持って再度、お隣を訪問したりしていた。
もちろん、うちの家でも隣近所の荷物を預かった。
当時、配達する人は、届け先が不在の場合、まずお隣へ行き、お隣も留守ならさらにそのお隣とか、裏のお宅とか、荷物を預かってもらえる先を探して隣近所を転々としていた。 再配達の対応もあったかも知れないが、記憶にない。
今の人にはとても信じられない話だろうが、以前はこれが当たり前の風景だった。
今は昔だ。
増え続ける宅配便と、不足するドライバー。
料金体系や配達時間帯の変更などのサービスの見直しは、もはや止むを得ないとしても、再配達を減らす対策を取っていかないと、現代の宅配便事情の根本解決にはならない。
「今すぐ持って来い」 「何時だと思っているんだ」 「もっと早く来れなかったのか」
宅配便は、「人」が届けてくれているという意識が低い人たちのこうした言葉は、懸命に届けようとする人の心を折る。
今の時代はお隣にというわけにはいかないので、お隣に代わるものとしては、宅配ボックスの設置かコンビニ受け取りの徹底だろう。
特に、家庭用の宅配ボックスは今後普及していくだろうし、差し込み口に伝票を突っ込めば自動でハンコを押してくれるものもすでにあるらしい。
そして、配達の人は宅配ボックスに向かって帽子を取り言う。
「毎度ありがとうございます」
これでいいんじゃないの。
かつてこんなCMがあった。
「場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ」
今は昔―。
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林 正寛 | ||