熱帯夜に。

熱帯夜に。

  2017/8/2  
     
 

食パンに付いている点数シールを集めるとお皿がもらえるというキャンペーンがある。

 

がんばって集めても期限があるので、それまでに集められなければ、あと数点のところで涙を飲まなくてならない。

 

ところが、あと数点のところで期限が迫ってきたシートを自分で集めるのは無理だと判断した娘が、フリマアプリを使って出品したところ、売れたと喜んでいた。

 

そんなものに値段を付けて売る方も売る方だが、買い手もいるところがオソロシイ。

 

 

これが時代なのだ。

 

商品やサービスの正当な値段や価値、労働またはレジャーの対価といったものが判りにくくなってきたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

なんといっても現代は、ボタンを押すだけで、買い物に行かなくても、銀行に行かなくても済む。

 

音楽も聴けるし、小説も新聞もマンガも読める。

 

飛行機も鉄道も船も予約できるし、ホテルも飲食店も映画館の予約もできる。

 

料理も洗濯もエアコンも扇風機もテレビもビデオも録画予約もボタン一つ。

 

車もバイクもボタン一つでエンジンが掛かるし、もうすぐ車はハンドルを握ることさえ要らなくなる。

 

フリーマーケットにしても、わざわざ場所を押さえて、何人かでそこまで品物を運んで広げなくても、スマホがあれば、簡単に売り買いができる。

 

その昔、決死の覚悟で買っていたアダルティなあれやこれやも、ボタン一つで簡単に手に入る(らしい)。

 

恋人が探せちゃうアプリなんかもあって、ちょっと怪しいかもと思いながらも、画像に出てくる可愛らしい女性に惹かれ、ついポチッとボタンを押してしまう(らしい)。

 

あげれば切りがないほどのボタン一つ。

 

 

この先も技術はどんどん進化するだろうから、人間は、使わない手足は退化し、反面、情報を詰め込む脳ミソだけは肥大化して、仕舞いには、あの火星人(宇宙人)の想像画に出てくるイカのお化けのような姿になるんじゃなかろうか。

ボタンさえ押せればいいわけだから。

 

会話は、絵文字や顔文字、スタンプで済むし―。

 

 

 

誰が最初に描いたかは知らないが、あのイカのお化けは、人間の未来の姿だったんだ。

 

いや、ああなると、もう人間じゃないよな…。

 

 

 

こんなことを考えながら、一晩中、イカになった気分でエアコンのボタンを押して、温度を上げたり下げたり。

 

 

 

熱帯夜はつづく…。

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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