尋問。
2017/9/12 | ||
先日、ある刑事訴訟における証人尋問を傍聴してきた。
証人は、事前に打ち合わせをしているだろう検察側からの質問には、余裕たっぷりで答えていたが、弁護人からの質問では、一転、雲行きが怪しくなってきた。
質問を受け止めるのではなく、かわそうとするから、突っ込まれるとしどろもどろになり、身振り手振りも大きく、長々と釈明したりする。
また、右陪席裁判官の質問も良かった。
そもそも、あんな高いところから発せられる「お上」からのお言葉は、それ自体、「下々」には畏れ多いのに、質問の内容がまた的確で、証人の答えは、ほとんど答えになっていなかったし、最後の方は、「記憶にない」を繰り返していた。
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私も過去、民事訴訟において二度、証人として呼ばれた経験があるが、あの席は、相当キンチョーする。
おまけに、質問者に対する答えは、壇上の裁判官に向かってしなくてはならないし、質問と答えがかぶらないよう、質問が終わってから一呼吸おいて答えなくてはならない。
録音のため、速記者のためはわかるが、そんなことは、よほど器用でないとできない。しかも、相手方代理人は、どんどん攻め込んでくるので、つい、質問に答えはかぶるし、答えは質問者に向かう。
だから、畏れ多くも「お上」から、「証人は、こちらを向いて答えなさい」、「質問が終わってから答えるように」と、度々注意を受けることになり、「下々」は、自分のペースで話すとこができない。
そんなわけで、大体の場合、証人にとって尋問は、不本意な結果に終わる。
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「あなた、ゆうべはお楽しみだったんですね」
「まぁ、仕事だからね」(質問に答えがかぶらないように)
「それにしても、ずいぶんと遅かったようですね」
「そうだったかな。ちょっと記憶にないなぁ」(うつむきながら)
「記憶がなくなるまで飲んだんですか?」
「いや、まぁ、そういうことではないんだけど」(水を飲みながら)
「結局、何軒行かれたんですか?」
「ん~何軒だったか、あまり記憶にないなぁ」(テレビを見ながら)
「私は、行くなと言ってるんじゃないんです」
「……」(天を仰ぎながら)
「あなたの健康のことを考えて申し上げてるんですよ」
「うん、わかってるよ」(スマホで昨夜のプロ野球の結果を見ながら)
「あなた、さっきからどこを向いて返事してるんですか!私の方を向いて答えてください。聞いてますか、あなたぁー」
尋問ー。
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林 正寛 | ||