尋問。

尋問。

  2017/9/12  
     
 

先日、ある刑事訴訟における証人尋問を傍聴してきた。

 

証人は、事前に打ち合わせをしているだろう検察側からの質問には、余裕たっぷりで答えていたが、弁護人からの質問では、一転、雲行きが怪しくなってきた。

 

質問を受け止めるのではなく、かわそうとするから、突っ込まれるとしどろもどろになり、身振り手振りも大きく、長々と釈明したりする。

 

また、右陪席裁判官の質問も良かった。

 

そもそも、あんな高いところから発せられる「お上」からのお言葉は、それ自体、「下々」には畏れ多いのに、質問の内容がまた的確で、証人の答えは、ほとんど答えになっていなかったし、最後の方は、「記憶にない」を繰り返していた。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

私も過去、民事訴訟において二度、証人として呼ばれた経験があるが、あの席は、相当キンチョーする。

 

おまけに、質問者に対する答えは、壇上の裁判官に向かってしなくてはならないし、質問と答えがかぶらないよう、質問が終わってから一呼吸おいて答えなくてはならない。

 

録音のため、速記者のためはわかるが、そんなことは、よほど器用でないとできない。しかも、相手方代理人は、どんどん攻め込んでくるので、つい、質問に答えはかぶるし、答えは質問者に向かう。

 

だから、畏れ多くも「お上」から、「証人は、こちらを向いて答えなさい」、「質問が終わってから答えるように」と、度々注意を受けることになり、「下々」は、自分のペースで話すとこができない。

 

そんなわけで、大体の場合、証人にとって尋問は、不本意な結果に終わる。

 

 

 

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「あなた、ゆうべはお楽しみだったんですね」

 

 

「まぁ、仕事だからね」(質問に答えがかぶらないように)

 

 

「それにしても、ずいぶんと遅かったようですね」

 

 

「そうだったかな。ちょっと記憶にないなぁ」(うつむきながら)

 

 

「記憶がなくなるまで飲んだんですか?」

 

 

「いや、まぁ、そういうことではないんだけど」(水を飲みながら)

 

 

「結局、何軒行かれたんですか?」

 

 

「ん~何軒だったか、あまり記憶にないなぁ」(テレビを見ながら)

 

 

「私は、行くなと言ってるんじゃないんです」

 

 

「……」(天を仰ぎながら)

 

 

「あなたの健康のことを考えて申し上げてるんですよ」

 

 

「うん、わかってるよ」(スマホで昨夜のプロ野球の結果を見ながら)

 

 

「あなた、さっきからどこを向いて返事してるんですか!私の方を向いて答えてください。聞いてますか、あなたぁー」

 

 

 

 

尋問ー。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

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