朝から吉高由里子。

朝から吉高由里子。

  2018/2/13  
     
 

今から接待の店まで行くのには早すぎるし、とはいえ一度会社に戻るのも面倒。

 

ということで、時間潰しに梅田の立ち飲み屋の暖簾をくぐった。

 

 

大人が10人も入れば満員になるカウンターだけのその店は、まだ夕方6時前だというのに私がその10人目の客で、大柄な私は、奥に陣取るお客さんに詰めてもらい、ようやく右肩をカウンターにねじ込むことができた。

 

お客は、ペア2組と一人飲み6名。

 

ペアは、比較的若い男女のカップルとサラリーマン同士。

 

一人飲みは、①中年サラリーマン、②ヘルメットを腰にぶら下げた現場作業員風、③現役を退いたばかりで時間の使い方がよくわからない感じのオジサン、④10年以上前に現役を退いて老後を楽しんでるオッチャン、⑤素性不明の外国人。

 

私は、生ビールと好物のポテトサラダを注文した。

 

 

一人飲みの人たちは、私以外全員、たばこを美味そうに吸いながら、ただ空間を見詰めたり、スマホを操作したりしながら、黙々と酒とアテを交互に口にしている。どことなく哀愁を漂わせながらも、「孤独」を「自由」と読み換えれば、一人飲みも寂しくはない。

 

なんの前触れもなく、たまたまこの都会の小さな立ち飲み屋で集ったこの人たちは、どんな人生を送ってきたのか、今日の仕事はどうだったのか、今夜はどこで寝るのか、聞いてみたくなる。

 

 

しばらくすると、私の隣にいる④が話しかけてきた。

 

「お兄さん、お仕事の帰りですか、ゲップゥ~」

 

― これは、だいぶん、飲んでるな。

 

「ええ、そうですけど」

 

「どんなお仕事してんの?ウィ~」

 

― なんだか吉高由里子みたいになってるぞ。

 

「サラリーマンです」

 

「オッチャンはいつからここで飲んでんの?」

 

「いつからって、朝からやないか、グビッ」

 

「えっ、朝から?」

 

「はい、朝から。ウヒッ」

 

「飲み過ぎですよね」

 

「やかましい!あのな、わしは現役のころは朝まで飲んどったけどな、今は朝から飲んでんねん。ガハハハッ」

 

― いいナ~、それ。私も将来、こうありたい。

 

「ハイボール飲んでウィ~!かんぱーい!」

 

 

 

 

で、接待に遅刻しました。

 

以上

 

 

 

 

 

 

  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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