99.9

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  2018/2/20  
     
 

刑事裁判というのは、証拠に基づき、常識に照らして考えたとき、検察官の言い分に「合理的な疑問を残さない程度」の確信が持てるか否かを判断するものである。

 

そのベースにあるのは、世界人権宣言や国際人権規約に定められ、憲法によっても保障されている「推定無罪」の原則であり、組織力や強制力に劣る被告人が自ら無罪を証明することが困難な立場にあることを支える「疑わしきは被告人の利益」である。

 

 

先日、松本潤主演のドラマ「99.9刑事専門弁護士-SEASONⅡ」を見ていて、4年ほど前の大阪地検特捜部による郵便不正事件を思い出した。

 

証拠隠滅罪で懲役1年6月の実刑判決を受け服役した前田元検事は、その後、京都弁護士会主催のシンポジウムでの講演で、

 

「不利な証拠を組織的に隠ぺいし有罪を取るという独特の発想がある」、

「取り調べで不利な話が出ると調書に残さない」

 

などと、古巣の捜査手段を赤裸々に述べている。

 

 

こうした捜査手段が日本の刑事裁判での高い有罪率99.9%を支えてきたわけだ。

 

 

前田元検事は、京都弁護士会主催のシンポジウムでの講演の冒頭、現役検事が犯した罪の重さ、社会的影響の大きさを慮り、「万死に値することをしてしまった」と謝罪している。

 

「万死に値する」は、裁判官が訓戒などにおいてよく使う言葉である。

 

心情的にはもっと重い刑を言い渡したいのに量刑相場の壁に立ちふさがれ、罪の重さと量刑がバランスしないときなどに被告人に対し、あなたが犯した罪は万死に値するのだ。それほど重い罪を犯したのだ。十分反省しろと―。

 

 

1日1回死んだとして、1年で365回死ぬことになるから、1万回死ぬには27年以上かかる計算になる。

 

我々市民は、「推定無罪」も「疑わしきは被告人の利益」も砂上の楼閣に過ぎなかったことを思い知らされたわけだから、そりゃあ罪も重い。

 

 

 

前田元検事の有罪判決が確定してから約7年。検察は、組織の体質改善を図り、あらためて審理の公正を見直ししたのだろうか。

 

 

検察は、有罪至上主義の上に乗っかった有罪率99.9%へのこだわりを捨て、「SEASONⅢ」が放送される不名誉は避けて欲しい。

 

 

 

 

松潤ファンには申し訳ないが―。

 

 

  

 

 

  林 正寛  
     
     

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