着地に失敗しないように。
2018/6/5 | ||
先週、現場確認を行った築50年の団地の一室。
この仕事を始めて間もなく丸13年。思わず目を覆いたくなるような現場をたくさん見てきましたが、この団地の一室の汚損状態は極めて深刻でした。
場数を踏んで慣れている私でさえ、筆舌に尽くし難いほどの苦痛を感じました。
この部屋の主の男性は、独身のまま72歳でこの世を去りました。男性がどのような人生を歩んできたのか私は知りませんが、晩年は精神疾患に悩まされ、隣人とのトラブルに巻き込まれ、最後は癌を患ったようです。
部屋の深刻さは晩年の男性の姿を映しだしているのだと思いますが、それはあまりにも悲惨な光景でした。
人生はいつのときも幸せであるに越したことはないのですが、最終的には、晩年がどうだったかではないかと思います。
晩年が幸せならば、それまでの苦しかったことも思い出として受け入れることができるし、憎かった人のことも許せる。いろいろあったけど、納得して死ねるような気がします。
その反対の場合、幸せだったころの思い出は、切なすぎます。
この男性は、大手製薬会社に勤務されていて、亡くなられたときの所持金は、割と高額水準でした。幸せな時もあったのだと思います。
私は、子どもや孫に囲まれ、「おじいちゃん死なないで」と叫ばれながら死んでいくのなんて勘弁してほしいとも思っています。
しかし、そんな偏屈な考えはもうあらためないといけないのかもしれません。
家族に見守られながら旅立つなんて、とても幸せなことなんだろうと思います。
とにかく、私の人生はいつだって怪しいので、着地に失敗しないようにしたいと、今回、つくづく思いました。
以上。
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林 正寛 | ||