6月の熱い夜の誓い。

6月の熱い夜の誓い。

  2018/6/29  
     
 

 

孫が生まれた。

 

予定日を4日過ぎ、難産だった。

 

 

出てきたくなかった気持ちは、私にはよくわかる。

 

私も当時、母のお腹から死んでも出たくなかったが、最後は本当に死にそうになって無理やりバキュームで引っ張りだされた。

 

 

人は、この世に生まれた瞬間から「立場」を背負わされる。

 

長男だとか長女だとか、初孫だとか、後継ぎだとか。

 

そして、この子は、自分の意思とはまったく関係のないところで「林正寛の孫」という立場も与えられた。

気の毒で仕方がないが、こればかりはどうにもならない。

 

 

娘は、私を見るたびに子どもに向かい、「ほら、じいじだよ、じいじが来たよ」と話しかける。

 

恐ろしいことに、私には、「じいじ」という立場が与えられた。

 

― なにがじいじだ。人を年寄り扱いするんじゃない。

 

と独りごちたところで、孫の人生はもう始まってしまったのだ。立場を放棄することはできない。

 

 

 

昨夜、布団に入りながら、「ハヤシくん、孫はいいぞ、可愛いぞ」と、今から十数年前に「じいじ」となった顧問税理士の先生が話をしてくれたときの、かつてはマルサとして鳴らしたその険しい顔が、孫可愛らしさのあまり、まるでアイスクリームが溶けるようにドロドロに崩れていたのを思い出し、思わず身震いした。

 

 

いやいや、絶対にこうはならんぞ。

 

なにがじいじだ。

 

オレはじいじではなく、クソじじいになってやる!

 

と、いつまでもオトナになれないちっちゃな心に誓った6月の熱い夜。

 

 

 

 

 

 

  林 正寛  
     
     

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