―　アリスは、解散したんじゃなかったのか。

最近、ちょいちょい、テレビであの３人が歌っている姿を見る。

日本人アーティストでは初めて日本武道館３日間公演を行うなど、一時代を築いたアリスではあるが、「チャンピオン」の主人公のように、“ただの男に帰れない”彼らは３人とも７０歳になった。

「伝説のキャロル」でデビューした永ちゃんが、一躍時代の寵児となり、一世を風靡する姿を私は見てきた。

一時、「衰退」と映ったときもあったが、ついには時勢が認知し、永ちゃんは、昭和、平成、令和と生き抜いてきた。

しかし、“時間よ止まれ～”と歌ったスーパースターＹＡＺＡＷＡも、さすがに時間は止められず、日本初、７０歳の現役ロックシンガーとなった。

今年、満９０歳で亡くなった父の通夜の席で、寺の坊さんがこうのたもうた。

「死因はね、生まれてきたことですよ」

―　なにをいいやがる。

生まれた以上、死は避けられないが、生まれたことに死因を求めてしまうと、生そのものを否定されたようで面白くない。

イカリを上げたから船が転覆したんですよと言われてもだ―。

転覆を恐れて航海ができるか。

もうとっくに船は港を離れている。

深夜タクシーでの帰り道。

年が明ければすぐに７０才になる南佳孝がラジオから流れてきた。

♪～

人生はゲーム　誰も自分を

愛しているだけの　哀しいゲームさ

―　人生はゲームか。いいナ～。

「ウォンチュ～」

「お客さん、ウォンチュ～って、なにかいいことでもあったんすか」

「今日、誕生日なんだ」

「それはおめでとうございます。おいくつになられたんですか」

「弱冠５６歳」