映画スターのようにポーズを決めて。
2019/12/27 | ||
今年の3月に父が亡くなり、6月には母が亡くなった。
私は、両親とはもう40年、別居が続いていたので、普段は「会えなくなった」という物理的な寂しさは感じない。
ただその分、まだ実家にいるような気がして、だから、実家の玄関をカラカラと開け、ガラーンと静まり返った空気に触れると、あらためて父と母がいなくなった現実を目の当たりにすることになり、さわさわと寂しさが押し寄せてくる。
先日、実家で古いアルバムを見つけた。
モノクロの写真には、私が生まれるずっと前の父と母が写っていた。
場所は、65年前の京都。
映画スターのようにポーズを決める父と母はとても若くて、その表情は希望に溢れている。
こういうポーズは、いかにも昭和っぽいけど、それがかえって新鮮でカッコいい。
― 私も若いうちにこんな写真を残しておけばよかったナ。
しかし、こうしてだれもいなくなった実家の部屋で、私の知らない若かったころの二人の写真を眺めていると、不思議な世界に引きずり込まれる。
― この二人はだれなんだ、父と母は本当に存在したのだろうか、じゃあ、私は一体だれ?
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で使われたデロリアンがあれば、私は、“65年前・京都”と設定し、あの頃の父と母に会いに行くだろう。
そして、64年前と62年前に設定し、生まれてすぐに亡くなった兄と姉に会い、この手で抱きあげたい。
ついでに、40年前に設定し、40年前の私に「もっと勉強しろ。将来苦労するぞ」と忠告したい。
いや、待てよ。
あの頃、もっと勉強していたら、こうしてブログを書いている今の私が存在しなくなるから、それはマズい。
それなら、こう言おう。
「写真に写るときは、映画スターのようにポーズを決めて」と―。
アクセルを思いっ切り踏むと、デロリアンが火を噴いた。
今年も1年、アスキット・プラスオフィシャルブログをお読みいただきまして、ありがとうございました。
みなさま、良い年末年始をお過ごしください。
どうかご無事で。
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林 正寛 | ||