いつか終わる。

いつか終わる。

  2020/3/6  
     
 

 

花粉症の季節にマスクが店頭に無い。

 

 

こんな悲劇は、あのシェークスピアだって思いつかなかっただろう。

 

 

シェークスピアの4大悲劇といえば、ハムレットにリア王、オセロー、それにマクベス。

いずれも17世紀初めの作品で、人生に対する深い洞察を示しているといわれているが、私は、正直言って、よくわからない。

なぜ、この作品が何百年も語り継がれ、今も現役として舞台化されているのか理解できない・・・。

 

 

 

時を戻そう。

 

 

うちの家人は、家族のために、その日、入荷されているかどうかもわからないマスクを求めて毎朝、寒い中、ドラッグストアに並んでくれている。

 

この人は、こういうことをやらせると一級品で、毎日並んでるうちに顔見知りができ、そのうち、どこのだれかもわからない女性とオバハン同士意気投合し、あざやかな連係プレーでマスクをゲットしてくる。

 

 

ご飯を炊くこともできない私に比べ、家人の生活偏差値は相当高い。

 

 

いつだったか、夏に珍しく二人で川原に座って花火を見上げていたところ、「素敵だわー。あなたが死んでも、こうしてあなたと花火を見たこと、私、忘れないから」と―。

 

おそらく、家人のプランどおりに“事”は運ぶんだろうな。

 

 

 

 

いつか、コロナ騒動も収まり、そして、暑い夏を迎え、いつの間にか秋が深まり、気が付けば、また、街にはクリスマスソングが流れるだろう。

 

 

 

 

 

 

昨年、後輩が亡くなった。

 

胸に痛みがあると受診したときにはもう手遅れで、そこから6ヶ月後に旅立った。

 

3年前に転職が決まり、新しい名刺を嬉しそうに手渡してくれたときの顔が忘れられない。

 

そして、転職した後、飲み会にはいつも少し遅れて気味で、「すみません、忙しくて」と、頭をかきながら、どこか誇らしげに。

 

 

 

 

 

時は戻らない。

 

時は戻せない。

 

時は止まらない。

 

 

そして、いつか終わる。

 

 

 

 

   

   

 

 

 

  林 正寛