30分。

30分。

  2020/3/16  
     
 

 

先日の土曜日。

 

 

その日は、外出の予定も面談の予定もなく、少しゆったりした時間が流れていた。

 

思い付いて、古くなったマウスを買いに会社近くの文房具店に行き、帰りに昼ご飯を買いにコンビニに寄った。

 

もう何年も食べていないインスタント焼きそばが目に留まり、そのパッケージを眺めているとどうしても食べたくなり、会社に買って帰った。

 

私は、一切料理はできないが、まあ、お湯を注ぐぐらいはできる。

 

久しぶりの焼きそばに心が躍り(←こんなことで嬉しくなる単細胞)、楽しい気分でお湯を注ぎ、待つこと3分。

 

何かをしているときの3分は早いが、待つ3分は案外長い。

 

 

こんなときはスマホに限るが、肝心のスマホが見当たらない。

 

どこを探しても無いし、最後にいつ見たのか思い出せない。

 

会社の固定電話からスマホにかけてみたが、反応がない。

 

― 文房具店とコンビニに行くときは、手に持っていたよな。

 

今は、個人情報も、会社情報もスマホにぎっしり詰め込んであり、スマホがないと生活にも仕事にも差し障る。紛失するとかなりまずい。

 

とりあえず、文房具店とコンビニに探しに行こうと会社を飛び出した。

 

 

 

文房具店に向かって歩きながら(←こんなときでも走りません。いや、走れません)、レジでお金を払うとき、スマホをポケットに入れたことを思い出した。

 

― そうすると、コンビニか。

 

コンビニの店員さんにスマホの忘れ物がなかったか尋ねると、「無い」

 

諦めて、紛失したときの手続の仕方をスマホで検索しようとし、また、スマホが無いことに気がつき、傷つき、会社にもどり、もう一度探したが無い。

 

 

そして、最後の望みを託し、固定電話から再度スマホに電話をしてみた。

 

すると、微かに聞こえる振動音。

 

心が躍った。

 

― ああ、あった!

 

 

机の下のハードディスクの上にあった。

 

そういえば、マウスを取り換えたとき、暗かったからスマホの光で照らしながら作業をしたのだった。

 

つい、さっきのことなのに、思い出せず、大騒ぎした30分。自分に呆れた。

 

 

それにしても、何かをしているときの30分の早いこと。

 

 

 

 

 

 

 

一応、お湯を切ってみたけれど、もう麺じゃなくなっていた。

 

 

 

  

   

   

 

 

 

  林 正寛