「X・Y・Z」これで終わりだ。
2013/10/08 | ||
木樵のリップ・ヴァン・ウィンクルがある日、森で出会った小人たちに美味しいお酒をごちそうになった。 たいそう美味しいお酒だったのでつい飲み過ぎてしまい、彼は居眠りをしてしまう。 目が覚め、村に帰ると、村の様子はすっかり変わり、妻は何年も前に死んでしまっていた。 彼が一眠りしている間に、何十年もの月日が過ぎ去っていたのである。
「アメリカ版浦島太郎」とでもいうべき物語であるが、この時、リップ・ヴァン・ウィンクルがごちそうになった美味しいお酒は、「X・Y・Z」という名前のカクテルである。
レシピは、ラムとコアントローにレモンジュース。 「X・Y・Z」がアルファベットの最後であることから、「これで終わり」といった意味があるらしい。
BARで、「最後にX・Y・Z」と頼めば、KAKKOII。
「グランド13世(Grand XIII)」 最高級のコニャック「レミーマルタン・ルイ13世」をベースに、グラン・マルニエ(オレンジ・リキュール)とシャンパン、そしてレモンを少々絞って作られる「マティーニ」につけられた名前である。
米ミズーリ州にあるザ・リッツ・カールトン・セントルイスのロビーラウンジとバーの改装終了記念カクテルで、値段は、なんと1杯500ドル(約5万円)。
「グランド13世」は、クリスタルのブランド「ウォーターフォード」のクリスタルグラスに注がれ提供されるというから、最高級の名にふさわしい。
たとえ浦島太郎になろうとも、一度味わってみたい。
若い頃は飲んでる時でも気合が入っていたし、「最後」に「X・Y・Z」をスマートに注文する余裕もあったが、このごろは、とにかく酔いが回るのが早い。 「X・Y・Z」を頼む前に「終わってる」こともある。
「ハヤシさん、起きてくださいヨ」
「いつの間に居眠りしていたのか。あれっ?店の様子がすっかり変わってる!まさか一眠りしている間に何十年も過ぎてしまったのでは!」
「なに寝ぼけたことを言ってるんですか」
「じゃあ、最後に一杯、X・Y・Zをもらおうか」(松田優作風に)
「ダメですよ」
「ダメって?なんで君が決めるんだ」
「閉店です。もうとっくに終わってますから」
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林 正寛 | ||