となりにトトロはいる。
2016/11/08 | ||
15回目のテレビ放送で平均視聴率が14.2%だったそうだ。
「となりのトトロ」の人気は根強い。
いやいや、いるわけがないじゃないかと否定しながらも、子どもの頃にはもしかすると、となりにいたかもしれないという妙な現実感に大人も引き込まれ、しばしスマホから手を離し、映像から流れる風の声、雨雫の音に耳を澄ませてしまう。
私の島根県のいなかへ行けば、トトロの一匹や二匹はいそうなものだし、猫バスも走っているかもしれない。
しかし、残念なことに、大人にはトトロも猫バスも見えないらしい。
たしかに、私たちのいつもとなりにあるのは「現実」で、それも「希望」という名の現実であればいいのだが、たまに「絶望」なんかが顔を出すから厄介だ。
しかし、50年以上ぐうたら生きてきた私の経験は参考にはならないかもしれないが、「絶望」もそう長く居座るわけではなく、確実に終わっていくもので、あの頃の絶望も今ではすっかり忘れてしまっていたり、心の痛みだって、消えることはなくても、思い出に変わっていたりする。
生まれ変わる予定のある人はいいけれども、まずそんな人はいないだろうから、みんなが最初で最後の人生なわけで、最初で最後の一回切りだからこそ、生きるために赤っ恥を掻いたり、ときには周囲に迷惑や心配をかけることがあってもいいんじゃないかナ。
つまり、となりに「絶望」がやってきたとしても、決してあきらめないでほしいということ。ましてや、自ら自分の人生を終わらせてしまうような選択は絶対にしないでほしい。
ひとりで悩み、苦しむのはやめて、「大丈夫だから」と強がらないで、生きる意味や理由など考えてもわけがわからなくなるだけだから、考えるのもやめて、家族、学校の先生、友達、同僚など、誰でもいいから、となりにいる人に苦しい胸の内を打ち明けて、「助けろ!」と叫んでほしい。
生きていれば失うものはたくさんあるけれど、だからといってあきらめるには人生は長すぎる。取り戻せる機会はいくらである。
それには生きていること。
もし、生きる意味とか理由が知りたけりゃ、その答えは未来にあるから、自分で取りに行ってほしい。
いくつになってもとなりにトトロはいる。
だから、自分の人生をあきらめるな。
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林 正寛 | ||