焼酎のお湯割り。
2016/11/28 | ||
先日、私が新卒で入社した会社の元上司の方が突如、来社された。
私が結婚する際には、ご夫婦で仲人をしていただいたご縁もあって、奥様にも何かとお世話になり、何度か美味しい手料理もご馳走になった。
私の会社へはいつもご夫婦でいらっしゃるが、今回は元上司ひとりだった。
奥様は今年の1月に急性骨髄性白血病で旅立たれた。
その日奥様は、少し体調が悪いと近くの病院を受診され、それから3日後には目を閉じられたというから、ずいぶんと慌ただしい旅立ちだった。
とても賑やかな人だったので、その慌ただしさがいかにも奥様らしいなと思ったが、あれだけ賑やかな方が突如いなくなるとご家族はさぞや寂しかっただろう。
告別式のときのご家族の悲痛な表情が忘れられない。
流行語大賞の候補が決まった。
紅白歌合戦の出場メンバーが発表された。
一年を総括するようなニュースや番組が増えてきた。
そして今年もこの時期、喪中を知らせる葉書がポツポツと届きだした。
その中に今年は、加藤さんの名前があった。
加藤さんは、平成8年に議員立法で設立された国策会社に私が移籍した際の最初の直属の上司で、その優しい人柄は、私の眼には、弁護士や国税、警察、銀行などからメンバーを募った殺伐とした国策会社の中にあっては異色に映った。
当時社内は、皆が殺気立っていたが、加藤さんは一人、風呂にでも入っているかのような雰囲気で、およそ不良債権の回収という仕事には向いておらず、案の定、班の成績は散々で、加藤さんはよく上司から叱られていたが、私はこの人の人柄のおかげでずいぶんと救われた。
加藤さんとはよく安い酒を飲みに行った。 加藤さんは酒好きな割には弱くて、焼酎のお湯割りを3杯も飲むといつも幸せそうな赤ら顔をしてウトウトされていた。
人生は、失うものと得るものとどちらが多いのだろうか。
どちらが多かろうと、最後は自分自身もこの世からいなくなるのだから、そこですべてが清算され、プラマイゼロといったところだろうナ。
加藤さん、私はまだそちらへ行く予定はありませんが、またいつの日か、一緒に飲みましょうね。
加藤さんに教えていただいた、焼酎のお湯割りに梅干しを落として飲む飲み方だけは、今でも好きになれませんが…。
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林 正寛 | ||