浮世の値段。
2015/03/31 | ||
「この不動産の価値はどのくらいでしょうか?」 「この絵画は資産価値ありますか?」 「この債権は、現在価値に置き換えるといくらになりますか?」 「この会社の事業価値はありますか?」
このような「価値」に関する質問に対し、できるだけ「お金」に換算して返答する。 私たちは「価値」という言葉をよく使うが、「価値って一体、何?」と真顔で質問されると答えにくい。
そもそも「価値」というのは、プラスの概念のようなものに過ぎないので、より具体的に理解するために、私たちは「お金」に換算するわけだ(お金にしても、「現在価値と将来価値」という概念があるけれど…。)
「保有か売却か」にしても、保有し続けることで、将来の予想収益を現在のお金に置き換え、今、売却した場合の収入と比較すれば、損得がわかりやすい。
しかし、大切にしていた美術品をお金に換算したばっかりに、急に興醒めしたり、味気なく思えたりすることだってある。
それに、あくまでも概念をお金に置き換えるだけなので、前提条件が変わったり、最有効利用を読み違えれば、結果は大きく変わり、額面どおりにいくとは限らない。
経産省が「住みやすさ」という概念をお金に換算した。 通勤時間の短さや自然環境、地震リスクの低さなど、「生活の質」にいくら支払う価値があるのかを調査した。
これによると、日本全国でもっとも暮らしやすいのは島根県松江市で、松江市に住む価値をお金に置き換えると年間194万円に相当するらしい。東京都で人気の高い杉並区が140万円だから、松江市の価値の高さがわかる。
わが故郷の高い評価は嬉しい限りであるが、しかし、この「住む価値194万円」という金額をどう理解すればいいのか今ひとつよくわからない。
このケースではお金に換算するよりも、ひとつひとつ例を挙げながら言葉で説明する方が相手に伝わるかもしれない。
「浮世の値段は三銭」と言ったのは、高杉晋作である。 「え~っ、こんなにがんばってるのに、たったそれだけなんですか」
聖書には、こう書かれている。 「金持ちが天国に行くのはラクダが針の穴を通るより難しい」
この世でいくらお金を儲けても天国へは行けないようだ。 それなら、人生のゴールを天国か地獄かまで勘定に入れ、トータルして試算してみると…。
…三銭。案外そんなものかもしれないが、そう考えるとなんだか気持ちがしぼんでくる。
なんでもお金に換算すればいいというものではない。
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林 正寛 | ||