やっぱりやめときゃよかった。
2014/09/03 | ||
彼女の浴衣姿に胸がときめく。
花火、金魚すくい、リンゴ飴…。
水着姿の彼女にドキッとさせられる。
キャデラックのオープンカー、パナマ帽、サングラス…。
ビールジョッキを傾けた時、きれいな星空に気がつく。
入道雲、遠雷、夕立…。
蚊取り線香の匂いに故郷を思い出す。
朝顔、カブト虫、蝉の声…。
縁側でスイカにかぶりつく。
かき氷、そうめん、ざるそば…。
大人には夏休みの宿題がないことに、あらためて安堵する。
自由研究、絵日記、夏休みの友…。
まだ夏の暑さが残るというのに、暦が9月になると途端に「夏」は遠い過去の出来事となり、夢から現実に引き戻されるような感覚になる。
スイカにもそうめんにも興味がなくなる。
パナマ帽は、汗染みが気になる。
朝顔は雑草と化す。
真夏の日差し、潮風、打ち寄せる波をバックに海辺で知り合った彼女との初デートで、「あの時」のイメージとまるで違うことに戸惑い、水着に目が眩んだ自分の愚かさを思い知らされる。
彼女は彼女で、日に焼けた素肌に白いTシャツが似合う彼との初デートで、秋だというのに相変わらずジーンズにTシャツという彼の服装のセンスの無さに、やっぱりやめときゃよかったと、スマホの番号と調子に乗ってFacebookの友だちにまでなってしまったことを後悔する。
8月の大阪市は21年ぶりに猛暑日がゼロだった。
近畿地方の8月の降水量は、平年の約5倍だった。
淀川花火大会と宇治川花火大会が、大会史上初めて中止になった。
夏が終わったわけではない。
次の季節が始まろうとしているのだ。
来年の夏にまた会おう。
甲子園、校歌、かち割り氷…。
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林 正寛 | ||