親ごころ。
2013/05/09 | ||
私が小学4年生のころだったと思うが、ある日の参観日。算数の授業だった。
「この問題がわかるヒト!」 クラス中が一斉に、「ハイ、ハイ、ハイ!」
― なんだよ、みんなして。まぁ、どーせあたらないだろから。 「ハーイ!」 「はい、ハヤシくん」 「(どうしてこんなときに…)わかりませーん」
参観に来ている親たちを含め、そこそこウケたので私は満足していたが、母には恥を掻かせてしまった。 家に帰るなり母から、「ちゃんとしなさい」 こっぴどく叱られた。
私は、小さいころから勉強が苦手で、学校に行くのも苦痛だった。 朝、布団でぐずぐず、ごそごそしていると、母が、 「いつまでそうやってるの、早く起きなさい」 「いや、どうも熱があるみたい…。ゴホッ」 「また、そんな嘘を。ちゃんとしなさい!」
この度、大型連休を利用して帰省してきた。両親に会うのは昨夏以来であったが、元気な様子で安心した。 父の転勤の関係で、私は高校2年生の時からは両親とは別々に暮らしてきたが、どうにも私は、親の期待どおりに「ちゃんと」できず、離れて暮らす両親にいつも心配を掛けてきた。
こうして、たまにしかない機会をつかまえて母は、 「ちゃんと暮らしてる?」、「ちゃんと仕事はできてるの?」
もうすぐ50になるというのに、いつまで経っても無精な子にしか見えないのだろう。 ちなみに、定型の質問事項のうち、昨年あたりから、「ちゃんと食べてるの?」は削除され、「ちゃんと食事制限してるの?」に改定された。
2泊して、朝8時に大阪に向かって出発した。 連休中は道路が渋滞する。自宅到着は、午後3時ごろになるだろう。 今回の帰省は、小学6年生の長男と2人だったが、出発してすぐに長男が寝だしたので、休憩を入れずにアクセルを踏み続けた。
三田、神戸と渋滞の気配が無く、どういうわけだか宝塚も渋滞していなかったので、ノンストップで午後12時には自宅に着いてしまった。おそらく最短記録だろう。
着いてすぐに母に電話した。 ― あまりにも早くて、びっくりするだろうなぁ。
「たった今、自宅に着きました」 「また、そんな嘘を。ちゃんとしなさい!」 「……」
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林 正寛 | ||