唐獅子牡丹が泣いている。
2014/11/19 | ||
東京オリンピック開催、東海道新幹線開通、アポロ11号月着陸、ケネディ大統領暗殺、サザエさん放送開始、ベトナム戦争、マクドナルド日本1号店が東京銀座にオープン、森永ヒ素ミルク事件、3億円強奪事件…。
高度経済成長が優先された時代。
食品には、添加物や保存料、着色料がたっぷりと含有されていたが、美味しかった。
ビルの駐車場はアスベストがむき出しになっていたが、気にならなかった。
ヘビースモーカーの父は、窓を閉め切った車の中でも平気で喫煙していたが、それが当たり前だと思っていた。
空は光化学スモッグで曇り、海はヘドロでドロドロしていたが、仕方がないことだと諦めていた。
すり傷、切り傷、なんでも赤チンを塗ってりゃ気がすんだし、ともかく治った。
夏は直射日光を全身に浴びて、全身黒光りの「燃えろイイ女」がイイ女だと思っていた。
皮膚が強くなると言われ、痛いのを我慢してナイロンのタオルでゴシゴシ洗っていた。
ビンタ、ケツバット、蹴り、正座、うさぎ跳びに歯を喰いしばった。
練習中、水を飲むのは禁止されていて、喉が渇いても耐えた。
昔は「当たり前」だったことが、今では「ありえない」ことがある。
先日、「高校野球の監督が部員に暴行」の記事が載っていた。
読めば、試合中に監督が部員に平手打ちを3発かましたらしい。つまり、ビンタだ。
学校側は高野連に報告し、部員の心をケアし再発防止に努めると発表していた。
ここ数年、スポーツの指導者による暴行やセクハラが社会問題化した。そのために失われた尊い命もある。
しかし、この高校野球の記事。これは「暴行」だろうか。
ビンタを「暴行」とは、さすがに大袈裟すぎやしないだろうかと思わぬでもない。
今はビンタは「ありえないこと」ではあるが、ちょいと抗菌殺菌をしすぎやしないか、いざ病気になったときの戦う力はあるのかと心配になる。
そんなことを心配すること自体、「ありえない」のかもしれない。
一方で、インターネット上に氾濫する無法の力に対しては抗菌殺菌はなされず、子どもたちは「情報の暴行」を浴び続けているが、これはいいのだろうか。
こちらも早く「ありえないこと」になって欲しい。
渡世の仁義に命をかけて悪に切り込んだヒーローが旅立った。
♪~義理と人情を秤にかけりゃ義理が重たい男の世界
今どきこんな歌をうっかりカラオケで歌えば、若い人からは、「ありえない」と言われかねないだろう。
しかし、ヒーローは、どんなに時代遅れになろうとも、目立たず、はしゃがず、どこまでも寡黙に、どこまでも孤独に、大人の男を最後までつらぬき通した。
このスタイルも、今では「ありえない」のかもしれない。
今夜は思いっ切り歌おうか。
♪~背中で泣いてるぅ~唐獅子牡丹
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林 正寛 | ||