コワイ世の中。
2014/11/04 | ||
平成20年に始まった「ふるさと納税」という地方自治体への寄付。
その後、東日本大震災で被災した自治体への寄付が急増し、それによって被災者の暮らしが支えられ、地域の復興支援につながった。
まさに、ふるさと納税による寄付の趣旨に沿った運用と活用が行われてきたといえる。
ここにきて、再びふるさと納税による寄付が急拡大しているが、ところが、その背景にあるのはどうやら「返礼品」にあるらしい。
ふるさと納税による寄付を行うと、そのお礼として、地域の特産品や工芸品などがもらえるが、その返礼品を目当てに寄付が増えているようだ。
地方自治体の方でも特産品を競い、地元をPRしようと返礼合戦が過熱し、中には土地を無償譲渡する特典を設けたところもあった。
本来、ふるさとを応援したい、活性化させたいというのが趣旨・目的であったはずが、手段として設定した「返礼品」を得ることが目的になってしまっている。
「返礼品をもらうために寄付をして何が悪い」は、「料金が一定なんだから、じゃんじゃんネットを見て何が悪い」にどこか似ている。
共通なのは「お得感」
お得な料金、お得なプラン、お得なグルメ、お得な切符…。
最近、よく耳にする「お得」は、デフレから完全脱却できない中から生まれた経済活性化のためのキーワードのひとつなのかもしれない。
「お得」を上手に利用することは、生活する上での知恵であり、このインセンティブは効果がある。
しかし、得だから損だからと、そこを判断の基準にしてしまえば、当然、チャリティは成り立たない。 「ふるさと納税」による寄付は、地方活性化のための苦肉の策であるにしても、寄付に見返りを求めては、寄付の趣旨からはずれることになる。
お得、お得と宣伝するのは勝手だが、それに浮かれて大人がはしゃいでばかりいると、後世につまらぬ文化やおそろしい考え方を残してしまうことになる。
「お父さん、よく見て!その寄付には見返りがないよ」 「おっと、あぶないところだった。見返りがないのに寄付するバカはいないよな」 「そうだよ、見返りを求めない真心なんて嘘っぽいよね」
こんな世の中、コワイだろ。
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林 正寛 | ||