至難の業。

至難の業。

  2015/02/05  
     
 

先月の初場所で横綱白鵬が大鵬の持つ優勝記録32回を超える33回目の優勝を飾った。

 

しかし、場所後の会見で白鵬は、優勝を決めた12日目の取組みについて、同体とみなされ取り直しとなった判定について、審判部を強烈に批判したことから、お祝いムードが吹っ飛ぶ大騒ぎとなった。

 

「子どもでもわかる」

「なぜ取り直しにしたのか」

「もう少し緊張感を持って欲しい」

 

白鵬は大相撲を支えてきた功労者のひとりである。

八百長疑惑で人気が低迷している中、一人横綱として踏ん張ってきた。

人一倍努力もした。優勝33回で大相撲の歴史も塗り替えた。

 

しかし、いくらなんでも言い過ぎた。

「白鵬、ついに驕ったか」

 

それもやむを得ないかもしれない。

横綱として45場所目であるが、まだ29歳。青年と言ってもいい年齢である。

 

 

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本日の日経新聞。

野球評論家の権藤博さんのコラムに次のようなことが書かれてあった。

 

「球が速く、制球も悪くないのに勝てない投手がいる。何が足りないのか探っていくと「味」に突き当たる。体力、技術に加え、味が出てこないとプロでは勝てない」

 

この「味」について権藤さんは、勝負どころでど真ん中の半速球を投げきれる度胸と遊び心だと解説している。

 

それはつまり、心技体のうちの「心」の部分。追い込まれたときに発揮できる強い心、余裕を持てる心を備えているかいないかである。

 

白鵬は確かに強いが、負けが決まった相手力士の背中を突いてダメ押ししたり、今回の発言だったり、どうも、「心の備え」が足りていないような気がする。

 

そこのところが、「角界の父」として仰ぐ大鵬に優勝回数で追い越してもなお、白鵬の前に立ち塞がる大横綱・大鵬の壁なのかもしれない。

 

大鵬の横綱としての晩年は、ケガとの戦いであったが、幾度となく再起しては優勝を飾り、3場所連続で休場した明けの昭和43年9月場所からは、当時としては双葉山の69連勝に次ぐ45連勝を記録している。

 

この45連勝は、戸田に敗れて途絶えたが、ビデオ画像や写真では戸田の足が先に出ており、明らかに大鵬の勝ちであったことから「世紀の大誤審」と言われ、翌場所からビデオ判定を導入するきっかけになった取り組みである。

 

この誤審に対して大鵬は、当時こう言っている。

 

「横綱としてあんな相撲を取った自分が悪い」

 

このとき、横綱として45場所目、29歳のときであった。

 

 

おそるべし大鵬。

この壁を超えるのは至難の業である。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

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